CLO(物流統括管理者)とはどんな役職? 荷主のほぼ5割が対象、2026年に選任義務化
「30年前(物流2法)と同じ失敗」は許されない
現在、日本社会が直面している物流クライシスは、政策の失敗が大きな原因だ。 1990年に施行された物流2法(「貨物自動車運送事業法」と「貨物運送取扱事業法」)によって行われた規制緩和が運送会社の数を大幅に増加させ、供給過多となった。これにより、多くの荷主や物流事業者が、立場の弱くなった運送事業者に対して買い叩きと過重労働を強いたのだ。そして見せかけの物流改善に終始、本質的な物流の改善・革新を放置した結果、30年をムダにしてしまった。 この失われた30年間を取り戻すのは並大抵のことではない。 CLO選任義務化によって誕生するCLOの多くが、CLO本来の能力を備えてない劣化版CLOにならざるを得ない可能性が高い。そうなる以上、政府は「CLOを育成するカリキュラム」あるいは「本来の能力に満たないCLOを選任した荷主であっても、十分な物流改善を実施できるだけの政策」を用意するなど、このミッシングリンクを埋める施策を用意しなければならない。 30年の時を経て、再び物流政策の土台となる法律を改正する日本。当然、30年前と同じ失敗を繰り返すことは許されない。 今こそ政府の政治手腕が問われている。
監修:東京大学大学院工学系研究科教授 西成 活裕、執筆:物流・ITライター 坂田 良平