「好き」という気持ちが、SNS上で踏みにじられたり蹴散らされてしまわないために。(レビュー)
SNSにおける「言語化」本の最適解のひとつ
2020年頃からビジネス書を中心に、「言語化」にまつわる本が急増しました。何冊か拝読し、参考になる本もありましたが、そのなかでも本書は(現時点での)【言語化】系のSNSへ向けた本の最適解のひとつ、と言えるでしょう。 それにはいくつか理由があって、 ・好き、と安易に語ることの危険性と回避法に触れている(上述のとおり) ・好き、について語ることは「技術である」とタイトルから宣言されている(つまり(天与の資質ではなく)具体的に示された訓練で向上したり怠けると鈍るものであることがあると誰にでも分かる) ・「言語化とはいかに細分化できるかどうかなのです」という極意に近い方法を示している(読んでいて膝を叩きました) ・ネガティブな感想を持ったときの言語化とその危険性にも触れている 特に興味深かったのは第1章にある「日本の「ありのまま」感想文信仰」で、まさに「信仰」としか言いようがない感想文ついて、丁寧に解説されています。ここだけでも一読の価値あり。 また、表現手法の面でいえば、本書の真骨頂は、俯瞰的な「イメージの話、気構えの話」と具体的な「技術の話、訓練方法の話」がテーマごとに繰り返されている点にあります。このマクロとミクロの往復が、本書を奥深くかつ実践的なものにしています。 一気に通読して「面白かったー」と本棚に戻す、という読み方もよいですが、デスクや枕元に置いておいて、SNSで誰かや何かの応援の仕方に迷ったときにぱらぱら開いて役立つ部分を参考にする…というような読み方が、本書の一番いい使い方ではないかと、わりと本気で思います。 ちなみにわたくし、本書を読んでいて、正直「これ、書いたのわたしか…?」と思うくらい過去に近い内容を呟いた経験を思い出し、ふんふんと読み進めると「ああっ!! こんなに細分化して考えたことも丁寧に書いたこともなかったわ…、大変失礼いたしました……」だとか、「あー、こういうふうに説明すればよかったのか!」と恥じ入る経験が12回くらいありました。勉強させていただきました。はい。