「死ぬ5分前までしゃべっていたい」――引退に揺れる、上沼恵美子の孤独と本音
「『もう恵美子終わってますよ』って、もう一人の私が言ってます」。四半世紀続いた冠番組が相次いで終了。上沼恵美子(66)は寂しさをかみしめている。「私はテレビタレントですから、視聴率命です。収録中に視聴率は分かります」。マイノリティーだった女性芸人の活躍の場を開拓し、しゃべり一本で50年以上表舞台に立ってきた。漫才への思い、東京に進出しなかった後悔、主婦との両立、そして引退と老後。立て板に水のごとく、心境を語った。(文中敬称略/撮影:殿村誠士/Yahoo!ニュース オリジナル RED Chair編集部)
心にあいた穴が埋まらない
「今、大きな壁にぶつかって、どないしようと思っています。『もうあんたは出番じゃないねん』って、スタジオの空気が言うてるんですよね。『もう恵美子終わってますよ』って、もう一人の私が私に言ってます。寂しいなあと」 『快傑えみちゃんねる』(関西テレビ)が25年、『上沼恵美子のおしゃべりクッキング』(テレビ朝日)が27年。ライフワークともいえる番組が幕を閉じる。 「四半世紀ですよ。『おしゃべりクッキング』って10本撮りなんです。隔週水曜日、必ず行く。10回試食する。10回エプロン替える。生活の一部になってるわけですよ。達成感はあるし、有終の美を飾ったっちゅうのはあるんですが、心に穴はあきます。スースーしますよ。まだ埋まってないなと思います」 「これまでは30年やったものをやめても他の番組があった。今、穴がポコンポコンあいてるのは、どうすればいいんだろうと。寂聴さんがおっしゃってたんかな、人間は忘却という才能を持ってると。これまた、ものすごいゆっくりしてるんですよね。ボタンを押してサッと忘れられたらいいのに。この頃は『年齢を考えると、もうええか』って自分で自分を説得してます」
現在、66歳。この5年ほどは夫と別居し、初めての一人暮らしをしている。これもまた、孤独を感じさせる。 「離婚まで考えたんですけど、離婚も邪魔くさいなって。週末には彼、帰ってくるんですけども。平日はご飯炊くのも邪魔くさいから、サトウのごはんチンして。テレビ見ながら箸を口に運んでいる自分の姿を俯瞰で見たら、めちゃくちゃ孤独やなと思って落ち込みます。広い家に一人なんで、2階には5年上がってません」