「死ぬ5分前までしゃべっていたい」――引退に揺れる、上沼恵美子の孤独と本音
「西の女帝」でも「ご意見番」でもない
関西で盤石の地位を築き、「西の女帝」と称されることもある。自分ではどう思っているのか。 「腹立ちます。私、女帝じゃないので。なんで女帝とかご意見番って、女性週刊誌は書くんでしょうか。別にご意見も言うてないし、偉そうにもしてないし。そんなんできないんですよ。大きなプロダクションでもなく、私、個人(事務所)ですから」 『M-1グランプリ』(ABCテレビ・テレビ朝日)では女性芸人として唯一、審査員を務めてきた。漫才は「芸事の中で一番難しいもの」だと考えている。 「漫才やった期間は短いかもしれませんが、笑いのセンスとか、あり方は分かってるつもりです。ネタを作る力のある人じゃないと、私は受け付けないかな。漫才はお客さんを集めて、何の演出もなく、スタンドマイク一本で笑いの世界に巻き込む。一番シンプルで、人を幸せにする。泣きより笑いが難しいと思っているんです。だから世界一難しい芸だと思います」 今の芸人、とりわけ女性芸人の活躍に変化を感じている。 「昔はおもろい顔しとったら吉本入れとか、近所の人が言うてましたね。頭悪かったら、吉本しか行くとこないなあとか。今の『M-1グランプリ』なんて考えられないですね。こんな時代がやってくるとは夢にも思ってませんでした。女性芸人もね、大好きなんですよ。誇りを持って挑んでるじゃないですか。世界が変わったというよりも、彼女たちが変えたんだと思いますね。あそこまで突っ切ると、さわやかで尊敬します」
女性芸人として先陣を切る一方、家庭でも忙しかった。朝は弁当を作り、夕食の支度をして収録に行く。「しゃべりも速いんですけど、やることも速い。カレーは14分で作ります」。子どもの授業参観にも必ず行った。 「本業はタレントですね。そこに『主婦』と『母』がついてた。そうじゃないと、長く活躍させてもらえる世界じゃないです。でも、よく思うんですが、お勤めになってる方のほうがしんどい。バッチリ拘束されるじゃないですか。私なんかは収録したら帰ってきますから」 「世の女性が安定して仕事をするには、賃金上げることでしょうね。やっぱり劣るんじゃないですか、男性より。『女の人は結婚して出産してすぐやめよるから』なんて言いますけど、今はそんなことありません。もうそれをなしにせないかんわ。女性の賃金をドンと増やしてもらいたい。これもう、男性の倍にしたほうがいい」