「痩せているのにダイエットしたい」社会背景と健康リスクに向き合う
先進国の中で最も痩せている女性の割合が多く、20代の5人に1人が「痩せ」状態にある日本。これまで見過ごされてきた「痩せ」にひそむ健康リスクと、若い女性が「痩せているのに痩せたくなる」社会問題に向き合うため、2024年3月に『マイウェルボディ協議会』が立ち上がりました。内閣府も関わる大きなプロジェクトでもある『マイウェルボディ協議会』の代表幹事・田村好史先生と副幹事・室伏由佳先生にお話を伺いました。 【画像】おすすめダイエットフード
痩せている人は、太っている人と同じくらい糖尿病のリスクが高い
――初めに、今回のプロジェクトの軸でもある、若い女性の「痩せ」問題に注目したきっかけを教えてください。 田村先生:これまで糖尿病の専門医として、長年「メタボ」*と言われるようなどちらかというと肥満体型の人を研究対象にしてきました。その一方で、研究を進めるうちに、痩せている人が、太っている人と同じぐらいか、それ以上に糖尿病のリスクがあるということを知りました。ただ、なぜ痩せていて糖尿病になり易いのかが分からなかったので、調査してみたところ、若い痩せた女性は標準体重の女性に比べて、少食で運動量が少なく、筋肉量も少ないという「低回転タイプ」であるという傾向がわかってきました。 *メタボリックシンドローム:内臓脂肪症候群。内臓脂肪型肥満をきっかけに、脂質異常、高血糖、高血圧になる状態。 ――「肥満は体に悪い」というイメージが強い一方で、「痩せは体に悪い」というのはあまり知られてない気がします。 田村先生:そうですよね。糖尿病のほかにも「痩せ」にはさまざまなリスクがあります。年代によっても違いますが、10代の体重が増加する時期に食べてないと月経に問題が起きやすく、さらに運動していないことが加わると骨密度が増加しにくくなります。20代以降も、貧血、月経異常、不妊の原因になりますし、骨密度が下がる閉経後は、骨減少症や骨粗鬆症のリスクも高まります。 妊娠・出産に際しても、低体重児が生まれやすく、低体重で生まれた子供は、将来的に糖尿病になりやすいなど、リスクが次世代に及ぶこともあるんです。このように、女性が⾃分らしく健康的な体を保つことが難しくなっている流れがあり、その背景にある「痩せ願望」につながる社会的なプレッシャーを軽減すべく、『マイウェルボディ協議会』が立ち上がりました。