『モアナと伝説の海2』に登場、半神「マウイ」に彫られたポリネシアのタトゥーの意味とは
リーダーの印
モアナの父親で村長である「トゥイ」の体にはペアという複雑なタトゥーがある。これはサモアの首長が伝統的に入れたタトゥーだ。特徴的な黒い線と矢と点が背中の中央から膝にかけて広がるデザインで、このタトゥーを持つ者は共同体に奉仕し、名誉を持って導くことを表している。1本1本の線は家族、社会的地位、職業を表している。 「トゥイの村での地位や、個性、村人への話し方などを考慮する必要がありました。ペアは彼がどんな人物あるかを表しているのです」、とスア氏は言う。「彼のペアは海と島への奉仕と責任を意味しています」 マウイ島を拠点にしているタトゥーイストのスア・スルアペ・ピリ・モオ氏は、トゥイのペアにすぐ気づいた。「モアナの父親に首長の印であるタトゥーがあり、ディズニーが正しく描いてくれたと、とてもうれしく思いました」と氏は言う。 ハワイのマカ・ウヒと同様に、ペアの施術にはひどい苦痛が伴う。完成までに数週間から数カ月かかり、指導的立場に就く者にとっての通過儀礼とされている。ペアを入れることを拒んだり、完成できなかったりするのは弱さの表れであり、リーダーとしてふさわしくないと見なされる。 首長を表すデザインの中には神聖なモチーフとされるものがある。祖先の血統を表し、体の特定の場所に入れられる。「これらのタトゥーはリーダーとしての地位を表し、自分が治める土地に奉仕するという誓いなのです」とトエトゥウ氏は説明する。 『モアナと伝説の海2』にもスア氏は関わっており、今回はモアナの敵役として登場する「マタンギ」に新しいタトゥーのデザインを施した。スア氏とフォノティ氏は岩肌や衣類、カヌーなどに描かれるサモアのモチーフのデザインでもディズニーに協力している。 「大きな責任の伴う作業でした」と、スア氏は言う。「私たちの文化にとってタトゥーはとても重要です。自分たちの文化が正しく表現されるよう常に心がけてきました。鑑賞者に私たちの文化を理解してもらえることを願っています」
文=Maria Kanai/訳=三好由美子