ACP(人生会議)って何ですか?
Dr.高野の「腫瘍内科医になんでも聞いてみよう」
がん研有明病院院長補佐の高野利実さんが、がん治療に関する素朴な疑問にQ&A形式でお答えします。 【写真4枚】体力が落ちたと思ったときに…筋力アップ まずは20秒から
ACPというのは、「アドバンス・ケア・プラニング」の頭文字をとった言葉で、最近、がん医療の現場でよく聞きます。そのまま日本語にすると、「前もってケアの計画をすること」となりますが、ちょっとわかりにくいですね。 患者さんよりも医療者の間でよく使われていて、患者さんに広く浸透しているわけではなさそうですが、ときどき、患者さんから質問を受けることがあります。 「国も推奨している『ACP』というのを、私もやりたいのですが、どうしたらいいですか?」 「『ACPをやっておきましょう』と担当医から言われましたが、ACPって何ですか?」
実はよくわからない
実を言うと、私自身、ACPというのは、あまりよく理解できていなくて、「ACPとは何か」という質問にも、きちんと答えられずにいました。このコラムの連載は100回を超えていて、最新のトピックも取り上げてきたつもりですが、これまで、コラムの中で、ACPについて言及したことは一度もありませんでした。 そんな私ですが、2021年に、がん研有明病院の「ACP推進チーム」の責任者となりました。2010年代にACPという言葉が流行し始め、全国の先駆的な病院で取り組みが始まる中、がん研有明病院も積極的にACPを実践してきた歴史があり、その動きをリードしてきた看護師の皆さんと議論を重ね、ようやく少しわかってきたところです。 まだ理解しきれていないところや、モヤモヤしたところもあるのですが、それも含めて、「ACPとは何か?」に対する私なりの回答を書いてみようと思います。 1990年に米国で「患者自己決定法」という法律ができ、患者が、自分が受ける医療を事前に意思表示する「事前指示書」が推奨されたのが、ACPのルーツです。 死を迎えようとする段階で、心臓マッサージや人工呼吸などの延命処置をするかしないかなどをあらかじめ決めておくのですが、1回だけの明確な意思表示ではなく、患者さんの希望や価値観を確認しながら繰り返し話し合うことを重視するACPという概念に発展しました。 日本には、2010年ごろにこの概念が輸入されましたが、ACPとは何なのかについての共通の理解がないまま、言葉だけが一人歩きを始めた印象です。