神戸イニエスタが8度目結婚記念日に魅せた”神業アシスト”はいかにして生まれたか?
前泊が通例とされてきたアウェイ戦で、ヴィッセルは異例となる当日移動で鳥栖入りした。宿泊を減らすことで、新型コロナウイルスに感染するリスクを極力減らすことが目的だった。必然的に選手たちの身体にかかる負担が増す当日移動を、イニエスタはポジティブに受け止めている。 「厳しいスケジュールであることは間違いないが、それでも当日移動というのは自分たちの地元でしっかりと練習して、試合への準備をするためにはいい対策じゃないかと思っている」 前日練習を午前中に終え、午後からは最愛の家族と過ごした至福の時間をパワーに変えた。イニエスタのインスタグラム(@andresiniesta8)には神戸市内の自宅で、花瓶にさされた笹の葉に夫人のアンナさん、4人の子どもたちと願いごとを記した七夕の短冊をつるす写真がアップされている。 そのなかでイニエスタは『#JapanTradition』や『#tanabata』のハッシュタグとともに、日本の伝統行事を介して捧げた願いごとをこう明かしている。 『僕の願いは君たちの側で成長し、共に学び続けることです。』(原文のまま) さらに一夜明けたサガン戦当日は、スポーツジャーナリストとFCバルセロナおよびスペイン代表の中心選手という縁で出会った、アンナさんとの8度目の結婚記念日だった。同じくインスタグラムに結婚式当日のアンナさんの写真をアップしたイニエスタは、こんな日本語を添えている。 『ママ、8周年おめでとう!忘れられない、魔法に包まれたような、最高の日から8年!君の隣で、素晴らしい時を過ごせることに本当に感謝!ママ、無限大に愛してる!』(同) 2年前の夏から暮らす日本を、バルセロナに似た神戸という港町を、家族を、そしてバルセロナに次ぐ2つ目の所属クラブとなるヴィッセルでの日々を、心から愛している胸中が伝わってくる。守備を固めるために、後半アディショナルタイムにDF渡部博文と交代。ベンチで勝利を見届けたイニエスタは中2日で迎える、再び敵地で臨む大分トリニータ戦をすでに見すえていた。 「次の試合も土曜日なのですぐにやって来るけど、チームとしてコンディション面をどんどんよくしていかなければいけない。その意味で、今日の勝利がチームの手助けになればと思っている」 心身が充実しているからこそ頭脳もさえ、瞬時に描いたイメージ通りのパスを繰り出せる。ヴィッセルにとって初タイトルだった、天皇杯王者として臨む来日3年目の今シーズン。頼れる仲間たちに囲まれ、日に日に強まるリーグ優勝をも狙える手応えが、イニエスタが放つ存在感を増幅させていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)