神戸イニエスタが8度目結婚記念日に魅せた”神業アシスト”はいかにして生まれたか?
イニエスタが下した判断は、右足を軽くボールにあててボールの勢いを殺し、滑らかで美しい放物線を描くパスへと変えるプレーだった。意表を突かれたエドゥアルドと原、内田らは金縛りにあったかのように、一瞬ながら立ち尽くす。ならば、味方はどうだったのか。ドウグラスが笑顔を浮かべる。 「中央から相手を崩すときは、僕たちは質の高いプレーを出すことができる。特にアンドレスがかかわると、予想できないところから予想できないようなパスが出てくる。なので、彼と一緒にプレーするときには、僕たちは常にアラートを鳴らしながら準備をしておかなければいけないんだ」 サガンの守備陣が上空を見上げた刹那には、ドウグラスはすでにゴール前へ抜け出していた。ただ、ボールの落ち際を待っていては、必死に追走してくる敵の餌食になりかねない。イニエスタの新たな相棒として、今シーズンに清水エスパルスから加入したブラジル人ストライカーが下した判断はジャンピングボレー。利き足の左足から放たれた、アクロバティックな一撃がゴール左を豪快に射抜いた。 イニエスタが山口に戻してから、ドウグラスの移籍後、リーグ戦初ゴールが決まるまで要した時間は8秒。特に山口が郷家へパスを返した瞬間から、ボールが一度もピッチに弾むことなく値千金の決勝弾が決まるスペクタクルなシーンにも、イニエスタはドウグラスへの感謝の思いをまず捧げている。 「最後はドウグラス選手がスーパーゴールを決めてくれたので、チームとして勝点3を勝ち取って神戸へ帰れる。1試合目で引き分け、2試合目で負けという流れだっただけに本当に喜んでいます」 ホームのノエビアスタジアム神戸でサンフレッチェ広島に0-3の完敗を喫した、4日の再開初戦でイニエスタは先発フル出場している。中3日の過密日程で迎えるサガン戦へ。中断期間に36歳になった171cm、68kgの身体に大きな負担がかかるリスクを承知の上で、ヴィッセルを率いるトルステン・フィンク監督は先発に指名。リーグ戦の初勝利に導いてほしいと期待を託した。 「彼がいることによってチームのパフォーマンスも上がる。加えて、彼は責任感がすごく強い選手であり、今日もチームのリーダーとして、責任を背負ってプレーしてくれた」