免許証取得後1週間の息子にロングドライブをさせてみたら……
180~200km/hで流れる追い越し車線の速度に、初めは少し気後れしていたようだが、慣れるまでに時間はかからなかった。 この旅で僕と息子は半々くらいでステアリングを握った。弱気なことを口に出したのは、「フィレンツェで大きな200クアトロを走らせるのはきついよ」のひと言だけ。 狭く複雑な道路とガンガン突っ込んでくるクルマたち、、たしかにきつい。なので、フィレンツェだけはフィアット ウーノをレンタルした。途端に息子は元気を取り戻し、フィレンツェを楽しそうに走った。 最後の仕上げはカリフォルニア。LAからサンディエゴを往復するコースを、キャディラックで走った。アメリカをアメリカ車で走る経験も大切だと思ったからだ。 アウディ200クアトロで飛ばしたヨーロッパの旅とは対照的な、キャディラックでのカリフォルニアの旅、、とくに口には出さなかったが、とても楽しかったようだ。
予想通り、大学卒業後は一気に忙しくなり、程なく結婚。親子3人の旅はなくなった。それだけに、上記したヨーロッパとカリフォルニアのクルマでの家族旅行は思い出深い。 僕が兄にしてもらったことを息子にも、、といった思いがそもそもの入り口だった。 だが、それをすることで、僕自身が大いに楽しむことにもなったし、大切な思い出を作ることにもなった。
● 岡崎宏司 / 自動車ジャーナリスト
1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。
文/岡崎宏司(自動車ジャーナリスト) イラスト/溝呂木 陽