「大都市優遇、地方切り捨てだ!」国を訴えた“現職の裁判官”が語る「公務員の地域手当の改定」深刻すぎる問題点
これに対し、高裁長官・地裁所長とのやりとり、全国の裁判官とのやりとりに関する文書は「いずれも作成または取得していない」と記載されている(【資料②】)。
「地方支部の裁判官」の労働環境の過酷な実態
竹内判事はまた、地方の支部で働く裁判官の労働環境の実態を指摘した。 とりわけ、名古屋地裁岡崎支部(愛知県岡崎市)で相次ぐ裁判官の依願退官、豊橋支部での「ホテル代自腹での令状当番」などの例を挙げ、その背景について述べた。 竹内判事:「裁判官は、ある日突然、依願退官する。周囲と相談せずに決断して、秘密裡に退官届を出し、突然辞めていくケースが多い。 名古屋高裁管内でのエピソードを話すと、津地裁四日市支部で退官者が出て、填補(てんぽ)しなければならなくなったときに、人員が手薄で『てんてこまい』の名古屋地裁岡崎支部から填補要員を派遣させた。 岡崎支部で裁判官の依願退官が相次いでいるが、このことが大きな原因の一つになっているとみられる。 また、豊橋支部の裁判官は毎週1回、泊まりでの令状当番を余儀なくされているという。しかも、そのホテル代は裁判官が自費で払わなければならない。 なぜ、人員が不足している支部どうしでやりくりしようとするのか。人員が多い名古屋の本庁から填補要員を派遣すべきではないのか。 あからさまな本庁優遇・東京優遇の傾向がある。人員が手薄な支部どうしで何とかしろと言われると、みんな疲弊してしまう」 新海弁護士は、日常的に裁判所を利用する立場から、地方支部の裁判官の労働環境の過酷さを目の当たりにしているという。 新海弁護士:「地裁・家裁の支部の裁判官は、激務なうえに都市部の裁判官よりも給与が低く、依願退官が多い。それに伴って事件を担当する裁判官が変わる。 従前の裁判官が今まで一生懸命準備書面を読み証拠調べを行っていたのに、退官によりリセットされる。また一から始めなければならない。家裁は特に大変だ。 新人で赴任してきた裁判官は、かわいそうなくらい一生懸命にやっている。事件数は多いわ人が辞めてしまうわ。彼らの労働環境はきわめて過酷なものになっている。 東京と地方との格差のスパイラルは止めなければならない。地域手当の問題がすべての元凶だとは言わないが、裁判所ユーザーの国民として訴えていきたい」
【関連記事】
- 【本人インタビュー】「このままでは裁判制度が危ない…」国を相手に「違憲訴訟」を提起 “現職裁判官”が語る、裁判官・公務員の“地域手当”「深刻すぎる問題」とは
- サラリーマンの給与の“地域格差”は「官製」だった? 現役裁判官が“国”を訴える異例の訴訟を提起「すべての国民の未来のために戦う」
- 「宿直代」も、出張時の「特急券」も“自腹”…国を提訴する現職判事が語る、裁判官の“トホホな待遇”の実態
- “裁判官の会議”は「見られたら、とても恥ずかしい」… 現職の敏腕判事の“勇気ある発言”を待ち受けていた「運命」とは
- “SNS不適切投稿”の岡口判事を「罷免」した弾劾裁判の“中身”の問題点…国会議員が「裁判官の表現の自由」を裁く危険性