「大都市優遇、地方切り捨てだ!」国を訴えた“現職の裁判官”が語る「公務員の地域手当の改定」深刻すぎる問題点
裁判で地域手当の改定の「プロセス」を解明へ
新海弁護士は、訴訟において、地域手当の決定のプロセスを明らかにしていく意向を示した。 新海弁護士:「人事院勧告には、『賃金構造基本統計調査より算出した賃金指数をもとに算出した』とだけ書かれている。なんのことかさっぱりわからない。 国民生活に影響の大きい地域手当の算定についての根拠を示さず、押し付けているようなものだ。 このことについて国に説明を求め、明らかにしていくことが必要だと考えている。 2005年、2015年、今回とそれぞれ人事院勧告で地域手当を算出するのに使用した賃金指数、算出方法(データ、算出過程)について、人事院に対して情報公開請求を行った。 出された資料を基に、訴訟において、地域手当が決定された過程の問題点をそれぞれ指摘していこうと考えている」
現場の裁判官への意見聴取は「まったくなかった」
竹内判事は、現場で働く裁判官に対する意見聴取が行われなかったことを指摘し、その不当性を訴えた。 竹内判事:「今回の地域手当の改定で、地方の支部への転勤によって給与が下がり、不利益を被るという問題は拡大することになる。 退官する裁判官がさらに増えてしまう可能性が危惧される。 一番問題だと思うのは、そのような問題を含む地域手当なのに、最高裁が地方の裁判官を含む現場の裁判官の声をまったく聞いてくれないことだ。 最高裁は全国各地の個々の裁判官どころか、地裁所長や高裁長官に対しても意見の聞き取りを行っていない。 現に私も、地域手当の改定についての意見の聴取を受けなかった。それどころか、改定されること自体を知らされなかった。 せめて、『裁判官の地域手当の格差は縮小したほうがいいのではないか』『一律にして減俸にならないようにしたほうがいいんじゃないか』といった意見を吸い上げて人事院に伝えてくれたならば、まだ、改定にも納得感があっただろう。しかし、そのような手続きはまったく踏まれていない。 最高裁の事務総局も含め、中央官僚は、自分たちが20%の地域手当をもらえれば良いと考え、地方については意に介していないのではないか」 現場の裁判官に対する意見聴取等が行われなかったことは、市民オンブズマンが最高裁に対して行った情報開示請求への最高裁の回答(8月2日付け)から裏付けられる。 すなわち、最高裁の回答によると、地域手当の改定について、最高裁と人事院との間で何らかの文書のやりとりが行われた。しかし、その内容については「公にすることにより、今後率直な意見の交換もしくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある情報が記載されている」ことを理由に不開示となっている(【資料①】)。
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