「ちょっと悪い人」は突然死のリスクがある…健康診断の結果が良くない人が絶対やってはいけないこと
別の例でいうと、指摘される人の多い「中性脂肪」は、多少数値が高くても、食事などの生活習慣を改善すればすぐ元に戻る可能性があります。一方、尿検査で示される「クレアチニン」の数値が高い場合は、すでに血管の劣化が進行して腎臓に影響が出ていることを表しています。こちらのほうが緊急性が高いのです。意味を理解しないまま判定だけをバラバラに見ても、本当の血管の状態は推測できません。 「オールA」の人にも注意点があります。検査結果をすぐに破棄してはいけません。健康診断は、日々の生活習慣が体にどのような影響を及ぼしているかを示す、臓器たちの成果報告書のようなものです。すぐに捨ててしまうのではなく、以前の結果と見比べて変化を把握しましょう。変わらずA判定だったとしても、5年前より確実にB判定に寄ってきているとすれば、その原因を振り返ることが重要です。 ■「ダルマ落とし」のイメージで根本原因にアプローチ それでは、健康診断結果はどうやって見るのが正しいのでしょうか。まずは上の表を見て、あなたが健康診断で引っかかった項目にチェックを入れてみましょう。この表は私が尼崎市役所に勤めているときに作成し、保健指導の際に使ってきたものです。下位の項目は、より上位の段階にある項目の悪化の原因となっています。この表と健康診断結果を照らし合わせることで、血管がどの程度変化しているかを確認できるようになっています。 自分の血管がどの段階にいるのかを確かめたら、その下に位置する項目への対策を打ちましょう。 たとえば、今年初めて血圧の高さを指摘された場合、あなたは「②血管が傷み始める段階」にいます。そこで、その下の①を見てください。もしBMIや腹囲の数値が高いなら、たまった内臓脂肪から出ている悪い生理活性物質が血圧を上げている可能性が高いといえます。つまり、この場合の正しい対策は「高血圧の薬を飲む」ことではなく、「減量」です。薬を飲んでも根本的な解決にはなりません。 一方、すでに尿たんぱくやクレアチニンに異常があって、「③血管に深刻な変化が生じる段階」にいるとしましょう。この場合は、「④健康障害」に進行するのを食い止めるため、取り急ぎ、薬で血圧をコントロールすることも選択肢に入ってきます。 このように複数の項目に異常があるときは、「モグラ叩き」式で対処するのではなく、この表を利用して、下から削る「ダルマ落とし」のイメージで対応することが鉄則です。なぜその数値が悪化したのかを考えるために生活習慣を振り返り、根本原因にアプローチしましょう。 自分だけで考えても原因がわからないときは、医師や保健師の手を借りるのも手です。ただし、このときもっともやってはいけない行動は、「治してもらおう」と思って病院に行くこと。生活習慣病には自分が主体となって向き合わなければ、数値に振り回されてモグラ叩き式の対策をすることになる恐れがあります。根本的な改善が望めないまま制約の多い生活を送ることになりかねません。 せっかく健康診断でリスクを発見しても何も行動しなければ無意味ですから、医師の意見を参考にして方針を決めるのがおすすめです。受診のときは、自分が何を不安に思っていて、医師にどうしてほしいのかを具体的に伝えてください。たとえば「なるべく薬を服用せずに血圧を下げる方法を教えてほしい」のか、「そろそろ脳卒中などが心配な年齢なので動脈硬化の進行度合いを調べてほしい」のか、意図を持って受診するのがよいでしょう。医師からの指示を待つのではなく、自分で原因を考え、対策を立てましょう。そうすれば改善への意欲も高まるはずです。