「ちょっと悪い人」は突然死のリスクがある…健康診断の結果が良くない人が絶対やってはいけないこと
どのタイミングで予防し損ねてしまったのかを調べるために、過去の健康診断のデータをたどっていきました。その結果、突然死した人の多くが、健康診断でわかりやすい大きな異常が出ていたわけではなく、「少しずつ悪化している」傾向があったと判明したのです。血圧や血糖値はやや高めでも、高血圧や糖尿病と診断できるレベルではない人がほとんどでした。つまり、わずかな異常がじわじわと血管へのダメージを蓄積させていたのです。 そこで私は、病気と診断される基準よりも少し低い「予備群基準」をオーバーしている人と順に面談し、具体的な指導を進めていきました。血管の状態の推測に加え、なにげなく続けた食習慣や基礎代謝を下げる生活習慣を、一緒に探りあてながら改善のヒントをアドバイスする。これによって血圧やコレステロールの値を下げ、心臓や血管の劣化を進ませないことを目指したのです。こうした地道な指導の成果で、翌年以降の在任中、尼崎市役所において突然死する人はいなくなりました。 健康診断で大きな異常がないからといって放置するのではなく、数値が悪化してきたタイミングで生活習慣を見直すことの重要性が証明されたのです。 ■「モグラ叩き」のように項目ごとに見てはダメ 健康診断の結果を見るときに、絶対にやってはいけないことがあります。それは、項目ごとに「バラバラに見る」ことです。「血圧は上がったけど、中性脂肪は下がった」と一喜一憂するのは正しい見方ではありません。同様に、悪化している項目があるのに総合判定が昨年と同じだからと安心したり、DやEではなくB判定なら大丈夫だと思って放置したりするのも間違いです。 多くの方が健康診断の結果を見て、基準値を超えると「異常がある」と心配し、逆に基準値以内であれば「問題なし」と安心してしまいます。実はこれが落とし穴です。今の健康診断のシステムでは、まるで「モグラ叩き」をしているかのように、その年の「異常の有無」だけに目が向いてしまう傾向があります。しかし、そもそも基準値は、その人の年齢や体質などを考慮して設定されたものではありません。基準値以内に収まっているからといって、リスクが低いわけではなく、逆に基準値を少し超えていても、必ずしも大きな問題があるとは限らないのです。 項目ごとにバラバラに見ることの問題点はもう一つあります。多くの人が受け取る健康診断結果は、項目がずらっと並んでいるだけで、重みづけがなされていません。しかし実際には、項目ごとに調べる意味も違いますし、重みも異なります。 「血糖値」と「心電図」を例として説明しましょう。血糖は、血管にとってリスク因子の一つです。糖はベタベタとたんぱく質にくっつくため、余分な糖が多すぎると血管の壁を傷めます。 一方で、心電図は、血糖などのリスク因子が血管や心臓に影響を及ぼしたあとの“結果”を確認する検査です。心電図は心臓の電気的な活動を記録するものですから、血管の劣化が進んだり、心筋に大きな負担がかかったりすれば異常が出てきます。 つまり、血糖値が高いという“リスク”と、心電図に所見があるという“結果”を同列に扱うのはおかしいのです。心電図で「経過観察」と指摘された人は、経過観察している場合ではないことが多々あります。