「ちょっと悪い人」は突然死のリスクがある…健康診断の結果が良くない人が絶対やってはいけないこと
数値に異常があったからといって、「とりあえず病院に行く」のが正解だとは限らない。健康診断の正しい活用方法を保健指導の第一人者に聞いた。 【図表】健康診断の結果で「血管の状態」がわかる ■「早期発見」だけを重視するのはもう古い 健康診断が嫌いな人は少なくありません。忙しい中でスケジュールを調整して受けなければならない負担や、勤務先から強制されることへの抵抗感もあるでしょう。 労働安全衛生法に基づく日本の健康診断は、測定された数値が基準値を超えているか否かに重点を置いた「早期発見・早期治療」の発想で成り立ってきました。血圧が高ければ高血圧症、中性脂肪やコレステロール値が高ければ脂質異常症など、それぞれの基準値を超えたら「要精密検査」「要医療」と通知されます。 これまでの健康診断の考え方においては、個々の臓器に病気があるかないかが重視され、将来的なリスクをいかに予防するかという大事な視点が欠けていました。健康診断を「その時点で異常があるかないか」を判定するだけのものだと思っている人が少なくないのです。これが、「元気だから受ける意味がない」「わざわざ調べられたくない」と思ってしまう理由です。 「早期発見」の重要性を否定するわけではありません。ただし、「早期発見」だけの健康診断はもう古いと私は考えています。大きな問題が見つかったときだけ病院に行けばいいという考え方では、「自覚症状がないまま長期の経過を経て発症に至る疾患」には対応しきれないからです。 たとえば、日本人の死因の中でがんに次いで2番目に多い心疾患。心筋梗塞で死に至る場合、その何年も前から動脈硬化、つまり、血管の劣化は始まっています。ところが、健康診断では見過ごされてしまうというケースが多い。倒れてからではもう遅いのです。 血管の状態が悪くなっていくと、心筋梗塞や脳梗塞だけでなく、慢性腎不全を起こす確率も高くなります。たとえ突然死は回避できたとしても、人工透析が必要になったり、糖尿病合併症で失明したりしてしまえば老後のQOL(生活の質)が大きく低下することは想像に難くありません。さらに、血管が劣化すれば、多くの人が心配する認知症のリスクも上がります。 健康診断において本当に大切なのは、結果を正しく活用して自分の血管の状態をチェックすることなのです。 血管の劣化を進める大きなリスク因子である高血圧や高血糖などは、進行しても自覚症状が出ません。だからこそ、健康診断を通してリスク因子の種類や程度を認識し、数値が悪化しているようであれば生活習慣を見直していく必要があります。 健康診断の結果からは、現在の生活習慣を続けて3年後、もしくは5年後「健康な血管」を維持できるかどうかを推測できます。今の食生活や身体活動量によって血液の中身や血管の劣化の程度が決まり、それを継続した結果が20年後の健康を決めるのです。日本人の平均寿命は延びていますし、これまでの我々の研究結果などからも、70代までは予防が有効だと考えられます。遺伝的な疾患を除き、ほとんどの血管障害は予防可能なのです。 ■「ちょっと悪い」人こそ突然死のリスクに注意 保健指導を通して健康診断結果のとらえ方を変えてもらうことで、実際に突然死の予防につながった事例もあります。2000年頃、私が保健師として職員の健康管理を担っていた尼崎市役所では、60歳以下の現役世代が突然倒れて亡くなるケースが多発していました。なんと、多い年には20人近くの方が亡くなっていたのです。突然死の原因のトップは、がんでしたが、次いで心筋梗塞や脳卒中など。生活習慣を変えれば予防できたはずの病気です。