住友化学・旭化成・三井化学…石化不況で構造改革、化学メーカーが新事業確立急ぐ
製造ライセンス供与 海外と協業・水素技術を提案
新たな事業モデルの確立に向けて活発なのが、技術力を生かした製造ライセンス供与だ。住友化学は米KBRにプロピレンオキサイド(PO)製造技術のライセンス、米ルーマス・テクノロジーにアクリル樹脂(PMMA)のケミカルリサイクル(CR)技術のライセンスを供与し、協業する。住友化学の技術力をより幅広い顧客に提案してもらう取り組みだ。 また三菱ケミカルグループではリチウムイオン電池(LiB)用電解液の製造ライセンス供与や製造委託などに取り組む。レゾナックも川崎事業所(川崎市川崎区)で取り組む、廃プラスチックを水素やアンモニアなどにするCR技術のライセンス供与の提案を開始した。 旭化成は製造ライセンス供与に限らない、全社横断的に蓄積されている特許やノウハウといった無形資産を生かした「テクノロジーバリュー事業開発(TBC)」を推進。TBCでは顧客ニーズに合わせた技術支援やサービスなどさまざまな形を想定する。事業化のスピードと、保有資産を軽くするアセットライトを両立できる取り組みとして、従来に比べて、より早い収益化につながるとみている。
デジタル技術活用サービス 農業関連サイト拡充
デジタル変革(DX)の技術を活用した新たなサービス展開も出てきた。住友化学は農業関連のウェブサイトやアプリケーションを組み合わせた「つなあぐ」でのポイントサービスといった拡充に加え、植物など天然素材について売り手と買い手をつなぐ「ビオンド」の専用ウェブサイトを開設した。 特にビオンドでは約200種類の含有成分などを分析でき、データベースにまとめる。買い手はデータベースから欲しい成分を探すことができる。売り手は残さが発生する食品工場、買い手は健康食品や化粧品関連企業などを想定する。素材提供で培ってきた固有のデータやノウハウを生かす。 こうした無形資産を新たな価値としてビジネスを創出する「DX3・0」を展開する。辻純平執行役員は「今回のビオンドがその先駆けとなる」と力を込める。 一方、三井化学では企業変革の一環でモノ売りから、サービスを含めたコト売りへの転換に向けてDXを生かす考えを示す。 回収プラスチックの状態などを追跡できるブロックチェーン技術を活用した資源循環プラットフォームの構築に取り組む。市村聡常務執行役員は「同じプラスチックでもどれだけエネルギーを消費したかなどがわかることが、顧客にとって価値になる」と将来性への期待を語る。