ユース、トップ、代表でフル稼働した飛躍の1年も広島18歳FW井上愛簾「ベンチに入れず苦しい時期もあった」来季への覚悟示すU-19日本代表初ゴール!!
高校3年生世代ながらサンフレッチェ広島のトップチームでプロ初ゴールも記録していたFW井上愛簾が、ロサンゼルス五輪世代にあたるU-19日本代表の国内合宿最終日の練習試合で同世代での初ゴールを決め、良い形で飛躍のシーズンを締めくくった。 【写真】「イケメン揃い」「遺伝子を感じる」長友佑都の妻・平愛梨さんが家族写真を公開 流通経済大との練習試合では開始早々、右サイドでMF佐藤龍之介(FC東京)からピンポイントパスを受けると、右足で折り返したボールをニアポスト脇にズドン。井上自身は「角度のない状況だったのでシュート性のクロス、相手に当たればCKという願いも込めて中に送った」と正直にシュートではなかったと明かしたが、「そのままゴールにつながってくれて良かった」と喜びを口にした。 井上は昨年夏、広島ユースの一員で出場した『Balcom BMW CUP』で大活躍を見せ、9月に初のU-17日本代表入り。そのまま11月のU-17W杯にも出場した気鋭のストライカーだ。ただ、U-17W杯では数多くのチャンスを作り出しながらもゴールは奪えず、今年に入って選出されたU-19日本代表でも負荷調整のため出場時間が長くなく、ゴールから遠ざかる時期も続いていた。 そのため、代表でのゴールは初招集された昨年9月のフランス遠征(リモージュ国際大会)で、イングランドを相手に決めた2ゴール以来1年4か月ぶり。井上は出場した30分間×3本の1本目を「3-0でしっかり勝てたことがよかった」と前向きに振り返りつつ、やはり「ゴールという形で結果を残せたのは良かった」とホッとした様子だった。 もっとも井上にとっての2024年は、U-19日本代表の活動でインパクトを与える以上に大きな飛躍の1年となった。すでにプロ契約をかわしているため、トレーニングはトップチームで行っているものの、安定した出場機会のために高円宮杯プレミアリーグWESTには主力として出場。17試合17得点という驚異的な結果を残し、23試合22得点で得点王に輝いたFW山下景司(大津)に続く実績を残した。 また開幕当初からトップチームの公式戦にも帯同し、J1第7節・湘南戦では後半アディショナルタイムから投入され、17歳6か月19日でのクラブJ1最年少デビューを達成。第9節・札幌戦では約10分間ピッチに立った後、翌日のプレミアリーグWESTにフル出場するなど、負荷に応じた柔軟なプレータイム管理のもとで真剣勝負の経験を重ねてきた。 夏場以降はさらにフル稼働が続き、プレミアリーグWEST中断期間の夏場にはトップチームで約20分間の出場時間を与えられる試合も。そのうち8月11日の第26節C大阪戦では終盤にMFトルガイ・アルスランのゴールを立て続けにアシストし、トップチーム選手としての存在価値を示した。 またAFCチャンピオンズリーグ2(ACL)開幕後には9月19日のカヤ・イロイロ戦で初のフル出場を飾った後、U-19日本代表のAFC U20アジア杯予選に参戦。さらに11月のメキシコ遠征直後には、フィリピン遠征となった同28日のカヤ・イロイロ戦で再び90分間プレーし、プロ初ゴールを決めるなど、来季に大いに期待を感じさせる結果を残した。 そんな日々について井上は「トップの舞台でスタメンでなかなか試合に出られなかったり、ベンチにも入れないこともあって苦しい時期もあった」と振り返りつつも、高校年代とトップチームを行き来させてくれたクラブへの感謝を口にする。 「そこでユースの練習に参加させてもらえるのが自分にとってすごくポジティブだったし、トップでできない悔しさをユースの得点王、勝利、優勝という目標へのモチベーションにつなげられたのがすごく良かった。またトップも連戦が続くと総力戦になるし、ベンチ外の選手も大事になる。今季はACL2で何回か出場させてもらったけど、そういうチーム状況があったことも良かったと思う」 シーズンを通じた自己評価については「あのピッチに入らないとやれないことがある。自分もあそこに出て勝利に貢献したい気持ちが強い」と満足していないが、「セレッソ戦で2アシストできた時は本当に嬉しかったし、ああいうところを積み重ねていけたらと思っている」という手応えも見つめ、「来季こそは少しずつでも結果を残して、チームの勝利に貢献して、来季こそは優勝したい」と奮起につなげていく構えだ。 また井上によると、日々のトップチームでトレーニングを重ねていることによる経験も大きなものがあったという。広島のトップチーム練習は、サブ組でミニゲームに出ようものなら佐々木翔、荒木隼人、塩谷司、中野就斗といったJリーグ屈指の対人能力を誇る主力CB陣との対峙を迫られ、シュートを狙えば日本代表GK大迫敬介が待ち構えるという環境。世代別の国際大会でも味わえないようなハイレベルな駆け引きを求められる。 「サンフレッチェ広島で練習をずっとやってきて、高いレベルでずっとやらせてもらっていたので、ここ(世代別代表)に来てやれないということはない。むしろやれる部分が多かったりするので、そこは日頃の練習をサンフレッチェのトップチームでやらせてもらえているのは今年の自分にとって良い成長になった」 その中では「いまは(主力選手たちに)フィジカルで勝てない部分はあるけど、自分が勝てる一歩目の動き出し、背後への抜け出しというところでは、トップの練習で点も取れたりしているので、通用する部分もある」と手応えも。来季に向けても「これからの長いサッカー人生、どんどんいいところを出していって、メンバー入りして、スタメンに入って活躍できたらいいなと思います」という前向きな展望を口にした。 そうしたハイレベルな環境での経験は来年2月に控えるU-20アジア杯、それを突破することで出場権を得られる来年9月のU-20W杯に向けても活きるはずだ。そのためには来季、ポジションダッシュが一つの重要ミッション。「FWとしてゴールを求められる。今のサンフレッチェはストライカーが欠けてしまっていた部分があるので、これから色々と動くこともあると思うけど、将来は……“近いうちに”自分がそのストライカーになれればなと思います」。ユースの活動もなくなるため勝負の2025年へ、大きな覚悟を持って挑むつもりだ。