「『今年の目標』達成ハードルを少し上げてみる」ジェーン・スー
作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによるAERA連載「ジェーン・スーの先日、お目に掛かりまして」をお届けします。 【写真】この記事の写真をもっと見る * * * あっという間の年明け! みなさん、どんなお正月でしたか? 私は帯番組を始めてから初めて、元日から5日までラジオをお休みできました。人並みなお正月は約10年ぶり。 さて、1月初旬と言えば「今年の目標」です。毎年なにかしら考えて、下手をすると今月末にはすっかり忘れてしまうアレ。にもかかわらず、儀式的になにか決めないと尻の据わりが悪くなるアレ。 さて、今年は目標を立てる前に、1年前、2年前はどんな目標を掲げたのかチェックします。前年比、前々年比を見れば、無理のない目標が立てられるはずだ。つまり、達成できている自信がない。覚えてないんだもの。 まずは2024年。こういう時に連載をやっていると便利です。24年の頭に書いた原稿を見ると、「もっと時間を有効活用できるはずだというオブセッションから解放されたい。忙しさ起因のネガティブ感情を今年こそはどうにかしたい」とありました。忙しさにかまけ、何もできていないのではないか? 隙間時間にもっとなにかできたのではないか?という後ろめたさからの解放を願っていたようです。当然、そんな目標忘れていたけれど。 結果、24年は隙間時間にじゃんじゃんプロレス観戦をしたので、後ろめたさを感じることは一度もありませんでした。やりたいことが明確にあれば、無意識にやるってこと。つまり、焦りがあるうちはやりたいことがないってことで、後ろめたさなど感じなくてもよいということではなかろうか。発見! 23年初は「私が偶然もらえたようなチャンスを、誰かに与える季節が到来した。若者を公正に贔屓し、やりがいを感じるチャンスを与えられるか?」と書いていました。23年と24年は、本誌で書評連載を持つ文筆家の伊藤亜和さんのデビューに微力ながら協力できた実感があります。 すごい。去年も一昨年も、意外と達成している。これはおそらく、苦手克服ではなく、やりたいことを目標にすり替えているから。コツは「できていないことができるようになる」を掲げないこと。 だとするならば、今年は「仕事でもプライベートでもなにかひとつ、いままでにやったことがないことをやる」にします。漠然としているので、達成ハードルは少し上がりました。「やったことがないけれど、やってみたいこと」が早く見つかるといいな。 じぇーん・すー◆1973年、東京生まれ。日本人。作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニスト。著書多数。『揉まれて、ゆるんで、癒されて 今夜もカネで解決だ』(朝日文庫)が発売中。 ※AERA 2025年1月13日号
ジェーン・スー