「目標から逆算」の進路選択だけが正解?ミスマッチを防ぐため、保護者はどう関わるか
小・中学生はどう過ごしたらいい?
後田先生のお話を受けて、後田先生と、通信制サポート校 CAP高等学院 代表の佐藤裕幸先生、立命館アジア太平洋大学 東京オフィスPRマネージャーの伊藤健志氏が、進路選択で大切にしたいことについて対話をしました。(モデレーター:ベネッセ教育総合研究所 教育イノベーションセンター長 小村俊平氏) 対話から、進路選択における2つのポイントが見えてきました。 1つ目は、成績や就きたい職業から逆算する従来型の進路選択だけではなく、子ども自身が自分のありたい姿を模索し、それを叶えられる進路選択をすることも重要であること。 2つ目は、高校時代にさまざまな経験を積んだり、多様な分野の先輩や社会人と知り合ったりして、視野を広げることです。 高校生がこの2つのポイントを押さえた活動ができるようにするには、小・中学生はどのように過ごしたらよいのでしょうか。 後田先生は次のように話します。 「本校では、『進路について考えず、遊んでばかりで困る』と悩む保護者に、『我慢してください。お子さんはいつか歩き始めます』と伝えています。たとえば、桜並木がきれいな場所に連れて行っても、本人がスマートフォンばかりを見ていたら意味がありません。本人の意思が何よりも大切です。習い事でも遊びでも部活動でも構いません。子ども自身が楽しいと思えることを見つけてほしいですね」 佐藤先生は、子どもがやりたいことを続けられる環境を整えてほしいと述べました。 「有名スポーツ選手や著名人が幼少期に取り組んでいたことを、子どもに真似させたとしても、同じように成長するとは限りません。大切なのは、子どもが自分を見つめる時間です。保護者のかたは、子どもがやりたいことを見つけたら、それを続けられる環境を整えてほしいと思います」
「偶然」が子どもの道を切り開く
伊藤氏は、特に小学生のうちは「自然に触れてほしい」と語ります。 「自然の中では、雨が降ったり、風が吹いたり、想定外のことばかりが起きます。山や海に行ったり、虫や魚を捕まえたりといった活動を通じて、そうした状況を子どものうちに多く経験しておけば、大人になって答えが1つではない課題にぶつかっても、試行錯誤しながら乗り越えられる力が身に付いていくと思います」 最後に小村氏は、保護者には「子どもが内省をする支援をしてほしい」と語りました。 「スタンフォード大学の心理学者、ジョン・D・クランボルツ教授が提唱する『計画的偶発性理論』では、『個人のキャリアの8割は、偶然の出来事によって決定される』と言っています。成功者と言われる人の多くが、一直線に目標を達成したわけではなく、いろいろな偶然を利用しながら、道を切り開いてきたわけです。つまり、夢や目標はゴールではなく、進路を選択する際の理由や判断基準ととらえることが重要です。そのようにすれば夢を達成しても、燃え尽きてしまうことはないと思います」 また、子どもが、自身のやりたいことを見つけるために必要な支援について、こう続けます。 「後田先生も言われていたように、自分の思いや行動を振り返ることが大事です。保護者のかたは、子どもに問いかけて、子どもの思いを引き出し、それを子ども自身が言語化する内省を手伝ってあげてください。それが、より自分に合った進路を選べるヒントになるはずです」