「若者のコメ離れ」は大間違い…最もコメを食べなくなったのは「60代以上の高齢者」だった “年間10万トン”ペースでコメの需要が下落する理由とは
日本の人口分布は、少子高齢化で若者ほど少なく、中高年ほど多い。コメを食べなくなった50代以上ほど、人口に占める割合が高まっている。 「消費量を減らしている世代の人口が増えて、変わらず食べている若い世代ほど減ったことで、全体の消費量が減っている」(青柳氏) なぜシニア世代がコメを食べなくなったのか。理由は、肉食化と粉食化である。60代以上がパンやうどん、パスタといったコムギを使った食品と、それ以上に肉類の消費を増やしてきた。かたや20代や30代の肉類の消費は、50代以上より増加率が低い。シニア世代ほど、肉を食べてコメを食べなくなっている。
政府備蓄米をしれっと放出
また、今夏のコメ不足で最も深刻だったのは、「ふるい下米」の不足だった。一般的にコメの選別には1.7~1.9ミリのふるい目を使う。このふるいの下に落ちたコメは、ふるい下米や「くず米」、「特定米穀」と呼ばれ、米菓や味噌、焼酎などの加工用に使われる。 コメ不足が起きると、真っ先に足りなくなる。通常ならふるいから落とされるコメまで、主食用に回すようになるからだ。不作の年は、消費者の知らないところでコメの品質が下がる。そのたびに米菓や味噌、焼酎などの加工業者は原料調達の危機に面してきた。 2023年産は、このふるい下米の不足が著しかった。 「通常は50万トンくらい発生するのが30万トンぐらいしかなかった。20万トンほど減ってしまったので、騒ぎになりました。加工業者が原料を確保するのが難しくなって、政府備蓄米を一部放出しています」(青柳氏) 備蓄米制度は、1993年に冷夏によりコメが不足した「平成の米騒動」をきっかけに、95年に生まれた。適正備蓄水準として、100万トン程度を備蓄するよう、毎年コメを20万トンほど買い付けて保管している。これは10年に一度の不作が来ても供給できる量との触れ込みだ。 5年たった備蓄米は、主食用米の価格に影響しないように飼料用などとして販売する。建前は災害といった非常時のための備蓄ながら、実際には多量のコメを市場から隔離し、米価の下落を防ぐ手段の一つとなっている。