菅首相が所信表明演説(全文)「経済と環境の好循環」を成長戦略の柱に
全拉致被害者の帰国に向け全力尽くす
この夏、熊本をはじめ全国を襲った豪雨により亡くなられた方々のご冥福をお祈りし、被害に遭われた皆さまにお見舞いを申し上げます。毎年のように甚大な被害をもたらす豪雨や台風への対策は一刻の猶予も許されません。これまでは同じダムでも、水力発電や農業用のダムは洪水対策に使えませんでしたが、省庁の縦割りを打破し、全てのダムを活用することで洪水対策に使える水量は倍増しました。 7月の豪雨では木曽川で新たに事前放流を行い、流域の町長さんから私宛に感謝のお手紙をいただきました。堤防や遊水池の整備、大雨予測の精緻化などを組み合わせて身近な河川の洪水から命を守ります。自然災害により住宅に大きな被害を受けた方々が、より早く生活の安定を図ることができるよう、被災者生活再建支援法を改正し、支援金の支給対象を拡大いたします。水害や地震などの自然災害が相次ぐ中で、防災、減災、国土強靱化は引き続き大きな課題です。省庁、自治体や官民の垣根を越えて、災害の状況を見ながら国土強靱化に取り組み、災害に屈しない国土づくりを進めてまいります。 総理就任後、G7、中国、ロシアなどの電話会談を重ねてきました。米国をはじめ各国との信頼、協力関係をさらに発展させ、積極外交を展開していく決意であります。拉致問題は引き続き政権の最重要課題です。全ての拉致被害者の一日でも早い帰国実現に向け全力を尽くします。私自身、条件を付けずに金正恩委員長と直接向き合う決意です。日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、北朝鮮との国交正常化を目指します。
辺野古移設工事を着実に進める
厳しい安全保障環境の中、国民の命と平和な暮らしを守り抜くことは政府の最も重大な責務です。イージス・アショアの代替策、抑止力の強化については、先月公表の談話を踏まえ議論を進め、あるべき方策を取りまとめていく考えです。わが国外交、安全保障の基軸である日米同盟は、インド太平洋地域と国際社会の平和、繁栄、自由の基盤となるものです。その抑止力を維持しつつ、沖縄の基地負担軽減に取り組みます。普天間飛行場の危険性を一日も早く除去するため、辺野古移設の工事を着実に進めてまいります。これまでにも沖縄の本土復帰後、最大の返還となった北部訓練場の過半の返還など、着実に前に進めてきました。引き続き沖縄の皆さんの心に寄り添いながら取り組みを進めてまいります。 先日はベトナムとインドネシアを訪問しました。ASEAN、豪州、インド、欧州など基本的価値を共有する国々とも連携し、法の支配に基づいた、自由で開かれたインド太平洋の実現をめざします。中国との安定した関係は両国のみならず、地域および国際社会のために極めて重要です。ハイレベルの機会を活用し、主張すべき点はしっかり主張しながら共通の諸課題について連携してまいります。北方領土問題を次の世代に先送りせず、終止符を打たねばなりません。ロシアとは首脳間の率直な意見交換も通じ、平和条約締結を含む日露関係全体の発展を目指します。韓国は極めて重要な隣国です。健全な日韓関係に戻すべく、わが国の一貫した立場に基づいて適切な対応を強く求めていきます。 新型コロナウイルスにより人間の安全保障も脅かされており、国際連携の強化が必要です。保健分野など途上国を支援するとともに、多国間主義を推進していきます。安保理改革を含む国連改革やWHO・WTO改革などに積極的に取り組みます。世界経済が低迷し、内向き志向も見られる中、率先して自由で公正な経済圏を広げ、多角的自由貿易体制を維持し、強化していきます。日英の経済連携協定を締結し、日系企業のビジネスの継続性を確保します。また、経済安全保障の観点から政府一体となって適切に対応していきます。 来年の夏、人類がウイルスに勝った証しとして、東京オリンピック・パラリンピック競技大会を開催する決意です。安全・安心な大会を実現するために、今後も全力で取り組みます。2025年、大阪・関西万博についても、新型コロナウイルス感染症を乗り越え、日本の魅力を世界に発信してまいります。