菅首相が所信表明演説(全文)「経済と環境の好循環」を成長戦略の柱に
世界の国際金融センター目指す
わが国にとって、海外との人の交流を行い、海外の成長を取り込んでいく必要性は、ポストコロナにおいても変わりはありません。今月からビジネス関係者や留学生について、全世界からの入国を緩和しました。入国時の検査能力を来月中に1日2万人に引き上げ、防疫措置をしっかりと講じながら、グローバルな経済活動を再開してまいります。海外の金融人材を受け入れ、アジア、さらには世界の国際金融センターを目指します。そのための税制、行政サービスの英語対応、在留資格の緩和について早急に検討を進めます。コーポレートガバナンス改革は、わが国企業の価値を高める鍵となるものです。さらなる成長のため、女性、外国人、中途採用者の登用を促進し、多様性のある職場、しがらみにとらわれない経営の実現に向けて改革を進めます。 わが国の未来を担うのは子供たちであります。長年の課題である少子化対策に真正面から取り組み、大きく前に進めてまいります。政権交代以来、72万人の保育の受け皿を整備し、今年の待機児童は調査開始以来最少の1万2000人となりました。待機児童の解消を目指し、女性の就業率の上昇を踏まえた受け皿整備、幼稚園やベビーシッターを含めた地域の子育て資源の活用を検討し、年末までにポスト「子育て安心プラン」を取りまとめます。
民間企業でも男性の育児休業促進
男性の育児参加を進めるため、今年度から男性国家公務員には1カ月以上の育休取得を求めておりますが、民間企業でも男性の育児休業を促進します。共働きで頑張っても1人分の給料が不妊治療に消えてしまう。以前お話しした夫婦は、つらそうな表情で話してくれました。こうした方々の気持ちに寄り添い、所得制限を撤廃し、不妊治療への保険適用を早急に実現します。それまでの間、現在の助成措置を大幅に拡大してまいります。児童虐待を防止するため児童相談所や市町村の体制強化など、対策を強化します。一人親家庭への支援など、子供の貧困対策に社会全体で取り組みます。 新型コロナウイルスにより特に女性の雇用が厳しい状況にさらされていますが、こうした中にあってもこれまで進めてきた女性活躍の勢いを止めてはなりません。全ての女性が輝ける社会の構築に向けて、新たな男女共同参画基本計画を年末までに策定します。また、厳しい状況にある大学生、高校生の就職活動を支援します。同一労働同一賃金など、働き方改革を進めるともに、就職氷河期世代について、働くことや社会参加を促進できるよう個々人の状況に応じた支援を行います。障害や難病のある方々が仕事でも地域でも、その個性を発揮して活躍できる社会をつくってまいります。 人生100年時代を迎え、予防や健康づくりを通じて健康寿命を延ばす取り組みを進めるとともに、介護人材の確保や介護現場の生産性向上を進めます。一方で各制度の非効率や不公平は正していきます。毎年薬価改定の実現に取り組むとともに、デジタル化による利便性の向上のためオンライン診療の恒久化を推進します。2022年には、いわゆる団塊の世代が75歳以上の高齢者となります。これまでの方針に基づいて高齢者医療の見直しを進めます。全ての世代の方々が安心できる社会保障制度を構築し、次の世代に引き継いでまいります。 先月訪れた福島のふたば未来学園では、生徒の皆さんから復興に寄せる熱意、風評被害と闘う取り組みを伺う中で、未来を切り開き世界に羽ばたく若者たちが育ちつつある、そうした思いを強くいたしました。たとえ長い年月を要するとしても、将来的に帰還困難区域の全てについて避難指示を解除する決意は揺るぎません。福島の復興なくして東北の復興なし。東北の復興なくして日本の再生なし。被災者の皆さんの心に寄り添いながらいっそうのスピード感を持って復興再生に取り組みます。