菅首相が所信表明演説(全文)「経済と環境の好循環」を成長戦略の柱に
2050年までに温室効果ガス排出をゼロに
教育は国の礎です。全ての小中学生に対して1人1台のIT端末の導入を進め、あらゆる子供たちにオンライン教育を拡大し、デジタル社会にふさわしい、新しい学びを実現します。さらにテレワークやワーケーションなど新しい働き方も後押ししてまいります。行政への申請などにおける押印はテレワークの妨げともなることから、原則全て廃止します。 マスクや防護ガウンの生産地の偏りなど、サプライチェーンの脆弱性が指摘をされました。生産拠点の国内立地や国際的な多元化を図るとともに、デジタル化やロボット技術による自動化、無人化を進め、国内に医療・保健分野や先端産業の生産体制を整備してまいります。 菅政権では成長戦略の柱に「経済と環境の好循環」を掲げて、グリーン社会の実現に最大限注力してまいります。わが国は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことをここに宣言いたします。もはや温暖化への対応は経済成長の制約ではありません。積極的に温暖化対策を行うことが産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながるという発想の転換が必要であります。鍵となるのは次世代型太陽電池、カーボンリサイクルをはじめとした革新的なイノベーションです。実用化を見据えた研究開発を加速度的に促進します。規制改革などの政策を総動員し、グリーン投資のさらなる普及を進めるとともに、脱炭素社会の実現に向けて国と地方で検討を行う新たな場を創設するなど、総力を挙げて取り組みます。
観光や農業改革で地方への人の流れをつくる
環境関連分野のデジタル化により、効率的、効果的にグリーン化を進めていきます。世界のグリーン産業を牽引し、経済と環境の好循環をつくり出してまいります。省エネルギーを徹底し、再生可能エネルギーを最大限導入するとともに、安全最優先で原子力政策を進めることで安定的なエネルギー供給を確立します。長年続けてきた石炭火力発電に対する政策を抜本的に転換します。 私は雪深い秋田の農家に生まれ、地縁、血縁のない横浜で、まさにゼロからのスタートで政治の世界に飛び込みました。その中で活力ある地方をつくるという一貫した思いで総務大臣になってつくったふるさと納税は、今では年間約5000億円も利用されております。いわゆる東京圏、1都3県の消費額は全国の3割に過ぎません。観光や農業改革により地方への人の流れをつくり、地方の所得を増やし、地方を活性化し、それによって日本経済を浮上させる。インバウンドは政権交代時の約4倍の年間3200万人に、農産品の輸出額は政権交代時から倍増して年間9000億円となりました。日本の農産品はアジアをはじめ海外に根強い人気があり、輸出額はまだまだ伸ばすことができます。年初以来、新型コロナウイルスの影響が出る中でも、直近は前年から11%の増加となり回復の動きが出ています。 4月に農林水産省に発足した輸出本部の下で関係省庁が一体となって相手国との交渉を行い、輸出用の加工施設の認定も急速に進みました。2025年に2兆円、2030年に5兆円の目標に向けて、当面の戦略を年末までに策定し、早急に実行に移してまいります。これまでの農林水産業改革についても確実に進め、地方の成長につなげてまいります。新しい日常においても、旅は皆さんの日常の一部です。日本に眠る価値を再発見し、観光地の環境整備を一挙に進め、当面の観光需要を回復していくための政策プランを年内に作成してまいります。 地方の所得を増やし、消費を活性化するため、最低賃金の全国的な引き上げに取り組みます。新型コロナウイルスとの闘いの中で地方の良さが見直される一方で、産業や企業を巡る環境は激変しております。こうした状況を踏まえ、都会から地方へ、また、ほかの会社との間で、さらには中小企業やベンチャーへの新たな人の流れをつくり、次なる成長の突破口を開きます。大企業にも中小企業にも、それぞれの会社に素晴らしい人材がいます。大企業で経験を積んだ方々を、政府のファンドを通じて地域の中堅・中小企業の経営人材として紹介する取り組みを、まずは銀行を対象に、年内にスタートします。