菅首相が所信表明演説 温室効果ガス、2050年までに排出ゼロ「脱炭素社会を実現」
菅義偉(よしひで)首相は26日に召集された臨時国会で所信表明演説を行い、成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げ、2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにする脱炭素社会の実現を目指すと述べた。新型コロナウイルス対策や行政のデジタル化や少子化対策など、期限を区切った目標に言及する場面も目立った。 【中継録画】菅首相が所信表明演説 臨時国会が開会
温暖化への対応は「経済成長への制約ではない」
「脱炭素社会の実現を目指すことをここに宣言する」。菅首相が就任後初となる所信表明演説でこう語ると、衆議院本会議の議場から与党議員らの拍手が起こった。 首相は経済と環境が好循環するグリーン社会の実現に最大限注力するとして、2050年までに温室効果ガスの排出を「全体としてゼロにする」と明言した。 「もはや温暖化への対応は経済成長への制約ではない。積極的に温暖化対策を行うことが産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながるという発想の転換が必要だ」と述べ、次世代型太陽電池やカーボンリサイクルなどの「革新的なイノベーション」の実用化を見据えた研究開発を促進するとした。 脱炭素社会の実現に向けて国と地方で検討する場を新設し、環境関連分野のデジタル化も進め、効果的にグリーン化を進める意向も示した。 省エネルギーや再生可能エネルギーの導入にも注力するほか、原発推進も明言。「安全最優先で原子力政策を進めることで安定的なエネルギー供給を確立する。長年続けてきた石炭火力発電に関する政策を抜本的に転換する」と述べた。
コロナやデジタル化、少子化へ期限区切った目標
期限を区切った目標も目立った。 新型コロナウイルス対策については「国民の命と健康を守り抜く。その上で社会経済活動を再開して経済を回復していく」。冬のインフルエンザ流行期に備えて、地域の医療機関で1日平均20万件の検査能力を確保するとした。ワクチンは来年前半までに全国民に提供できる数量を確保し、高齢者や基礎疾患のある人、医療従事者を優先に無料接種できるようにすると述べた。 Go Toキャンペーンによって「旅行、飲食、演劇やコンサート、商店街のイベントを応援する」、経済再生に向けては安倍晋三前首相が推し進めたアベノミクスを継承し、「さらなる改革を進める」とした。 行政のデジタル化へ向け、司令塔としてデジタル庁を設置することもあらためて訴えた。マイナンバーカードについては今後2年半でほぼ全ての国民に行き渡ることを目指し、「来年3月から保険証とマイナンバーカードの一体化をはじめ、運転免許のデジタル化も進める」との方針を示した。 デジタル化に向けては「各省庁や自治体の縦割りを打破」「省益を廃し、民間の力を大いに取り入れる」ことも強調した。 少子化対策は「長年の課題」として「真正面から取り組む」と述べ、待機児童の解消へ向けて、ベビーシッターなど地域の子育て資源の活用を検討し、年末までに「ポスト子育て安心プラン」を取りまとめるほか、新たな男女共同参画基本計画も策定する意向も明らかにした。 そのほか、行政への申請などにおける押印は原則廃止することや最低賃金の全国的な引き上げに取り組むことにも言及した。 世界的なコロナ禍を受けて来年の夏に延期された東京五輪・パラリンピックについては、「人類がウイルスに勝った証として開催する決意だ。安全な大会実現へ全力で取り組む」とした。