“泥酔車破損事件”のWBC世界王者・寺地拳四朗にJBCが下した出場停止3か月&制裁金300万円の処分は本当に甘いのか?
だが、安河内事務局長が「JBCではウエートオーバーやリング上での処分の規定は厳しく定まっているが、こういったリング外で、真相が分からないものは非常に考えづらい」と説明するように、JBCの規定には、示談になり事件化していない案件を処分することを想定したものはなく、さらにリング内で起きたことと、リング外で起きたことに対する“刑量”を単純に比較することはできない。 繰り返すが、亀田大毅も比嘉も制裁金は取られておらず300万円の制裁金は前例のない重いもの。 安河内事務局長はWBCのベルトの剥奪の可能性について「ローカルコミッションで無期限停止などの処分だとしばらく試合ができなくなるので(WBCが)王座剥奪とか暫定王座をつくるなどの圧力になるかもしれないが、今回はある程度の期間が切られている。3か月だし、暫定とか強権発動までにはいかないと思う」との見解を示していた。酩酊の原因を作った友人からの嘆願書もJBCに提出されており、飲酒や酩酊しての危険な行為が恒常的に行われていなかったことも明らかになっているため、ライセンスの停止期間についてはベルトを失わないように“救い”を持たせたとも考えられる。筆者は「重い」「軽い」ではなく、バランスの取れた妥当な処分だったと評価する。 また「対戦相手の久田が可哀そうだ」「謝れ」との声もネット上で散見されるが、寺地は、この日、「準備をしていただいていたので、本当に申し訳なく思っています」と謝罪した。久田は不在だったが、すでに寺地会長と共に大阪のハラダジムを訪れて謝罪もしている。久田は世界戦に備えるため11月下旬に決めていた興行をキャンセルしていたため“迷惑料”も支払った。 寺地自身は、中止になった久田戦の実現について「今は僕の口からは言えることではないです」と答えたが、指名試合でもあり、寺地陣営は停止処分が解ける来年4月以降に仕切り直しのタイトル戦を組みたいという意向を固めている。 また寺地は会見で報道が出た際に「すごくいろんな事を考えました。今後、どうしていけばいいか、みたいなことを」と引退をも考えたことを打ち明けた。父の寺地会長が、「世間がコロナ自粛をしている時期に世界王者として自覚に欠ける行動をしたことは事実。いろんな人に迷惑をかけたのだから引退するのも選択肢としてある」と持ち掛けたことがきっかけだった。 だが「ただ自分が信頼を取り戻すというか、僕にできることはボクシングしかないな、と改めて思ったし、ここでやめたら何も返せなくなるなと考えました」と、翻意したという。 現在は今回の騒動を起こした反省とショックで練習はランニング程度しかしていない。 「週刊誌に載ると思ってなかったし、今思えば自覚が本当に足りなかった。こういう記事になったということに責任感を感じている。重いものがあると感じている」 代表取材に対し寺地はそう言って深く頭を下げたという。世界王者としての自覚と責任のない行動であり、まして、新型コロナ自粛が呼びかけられている時期に記憶がないほど酩酊していたことも言語道断である。リング上で勝って両手でピースサインを送っていた姿とのギャップにファンは失望もした。 JBCから義務づけられた社会貢献活動も含め、今後の私生活の姿勢やリング上の姿で失った信用を取り戻していくしかないだろう。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)