適応障害を発症した技術科教員が明かした「プレッシャー」の複合的な要因とは、科目に理解なく「備品じゃダメか?」と言い出す管理職の説得に疲労
保護者負担を減らして教育ができないのは本末転倒
もちろん、保護者の負担を減らすべきという考えは「十分理解できる」と富岡さん。物価高でただでさえ教材費が値上がる中で、少しでも金額を抑えようと富岡さん自身もさまざまな教材を比較検討した。 しかし一方で、お金が原因で子どもたちに施すべき教育を諦めるのは本末転倒ではないかと訴える。授業を受けるのは保護者ではなく子どもたちであって、不十分な教育の弊害を被るのもまた、子どもたちなのだ。 「保護者に金銭的な負担をかけないのであれば、国や自治体が補助金を出すなどの対応をするべきだと思います」と、富岡さんは語気を強める。 現在、富岡さんは無事に適応障害から回復し、復職を果たした。今はクラス担任や部活動の顧問を外れて、技術の授業だけを行っている。ほとんどの時間を、職員室ではなく準備室で過ごし、学年会議にも参加していないという。もちろんその分、別の教員がクラス担任や校務分掌を引き受けているわけだ。 「学習指導要領が以前よりも分厚くなって、教員のやるべきことが増えたのは確かです。技術科教員を増やすだけでなく、1人ひとりの教員に負担をかけすぎないような制度設計が絶対に必要です。そうしないと、元気な教員にどんどんしわ寄せがいってしまいます」 現在、文部科学省は技術科の指導体制をさらに充実させる意向を示している。しかし、この「しわ寄せの連鎖」を断ち切れる仕組みをつくらなければ、学校そのものの持続可能性が危ういのではないか。 (文:高橋秀和、注記のない写真:CAN CAN / PIXTA) 本連載「教員のリアル」では、学校現場の経験を語っていただける方を募集しております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームからご記入ください。
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