適応障害を発症した技術科教員が明かした「プレッシャー」の複合的な要因とは、科目に理解なく「備品じゃダメか?」と言い出す管理職の説得に疲労
たった1人で全クラスの授業と担任、校務分掌まで
孤立無援だったことも、富岡さんが追い詰められた要因の1つだ。地元とはいえUターンで着任したため知った顔は皆無で、困ったことを相談できる相手がいなかった。 「現在の学校は、前任校より規模が大きく、先生も結構多いんです。事前にコミュニケーションをとれていればまた違ったのでしょうが、着任後すぐに教材申請をしなければならず、いきなり難航したため、職員室への入りづらさも感じていました」 しかも、技術科の教員は富岡さん1人だけ。なぜここまで厳しく見直しを迫られるのか、理由を推し量ることもできなかった。 「技術科教員が1人しかいない学校は珍しくありません。前任校でも1人で、3学年全クラスの技術科の授業を1人で受け持っていました」 実際、文部科学省が2022年度に実施した調査では、技術を担当する教員の23%が正規免許を持っていないことが明らかになっている。これはそもそも、技術の教員免許を取得できる大学が少ないことも原因のようだ。 「前任校は週10コマだったので、担任をしても週14コマと十分余裕がありました。生徒指導などの校務分掌にも積極的に取り組めたんです。しかし、今の学校は技術の授業だけで週18コマ。担任をすると授業準備の時間がほぼなくなってしまうため当初は断ったのですが、管理職に『他の先生方にも週18コマで担任をお願いしているので』と言われてしまいました」 もともと富岡さんは、生徒指導やクラス担任の先生に憧れて教員を志した。前任校でも担任として複数回卒業生を送り出し、その喜びは非常に強いものだったという。そこで現在の学校でも最終的にはクラス担任を引き受けたのだが、負担は想像以上だった。 「前任校では、働き方改革を意識して非効率なことはなるべくせず、残業も控える雰囲気がありました。でも、着任校は違いました。例えば、終業時間は17時にもかかわらず、学年会議は17時を回ってから始まり、当然のように2時間以上続きます。また、保護者や地域の人からのクレームを恐れて、職員室で出たゴミは一度封筒に入れてから捨てるというルールなどもあるのです」 一方で、担任を持たず、授業も週10コマ程度しかない教員も複数人いたという。休職経験があるなど、のちにそれぞれの理由は判明するが、当時着任したばかりの富岡さんは知る由もない。風通しの悪さや不透明さに起因する不信感もあり、富岡さんの心身は次第に蝕まれていった。