適応障害を発症した技術科教員が明かした「プレッシャー」の複合的な要因とは、科目に理解なく「備品じゃダメか?」と言い出す管理職の説得に疲労
技術科の学びの意義は管理職でさえ理解不足
さらに追い打ちをかけたのが、「技術科に対する理解の低さ」だ。中学校学習指導要領では、技術科において「材料と加工」「エネルギー変換」「生物育成」「情報」の4つに関する基礎的・基本的な知識および技術を習得することを目的としている。 「技術科は受験科目ではないことから、『副教科』と呼ばれるなど軽視される傾向にあります。しかし、2020年からの学習指導要領は技術科の目標を『問題解決能力の育成』としています。よりよい生活の実現に向けて必要な力を身につけるために、子どもたちにとっても重要な科目だと思うのです」 例えば「材料と加工」は、散らばっているものをどうするかという問題を、棚の作成などを通じて考える。また『生物育成』では、例えばトマトの栽培などを通して必要な栄養素や環境を考えるという。 「予算申請において、私は1年生にプランター(鉢植え)のキットを購入したいと希望していました。2年生ではそのプランターを使用して植物の栽培をすることで、『材料と加工』と『生物育成』を連続的に学ぶことができます。しかし教頭には、『プランターは備品があるので、それを使えないか?』と言われました。また、技術を通して学ぶ問題解決能力は一生ものです。科目を通して『持続可能な社会の構築』を体現する意図もあって、教材を閉じて長く保存できるクリアファイルも申請しましたが、それも不要だと言われました」 各分野の学びの意義を深く理解していない相手に、その価値を伝えるのは難しい。粘り強く説明を繰り返し、なんとか申請を通したものの、富岡さんはすっかり疲弊してしまった。 そして、異変が起きる。まったくやる気がわかず、体が思うように動かない。教室に向かう階段で、耐えきれず座り込んでしまうこともあった。病院で適応障害と診断され、富岡さんは休職することに。管理職へ報告した際に、予算の見直しに関する一連の対応について弁明されたという。 「ちょうどその年から、自治体で学校徴収金の上限額が一律で設定されたのだと言うのです。今まで勤務してきた自治体では聞いたことのない話で驚きました。保護者の負担を軽減するために、例年よりかなり低く設定されていたようでした」