大晦日の神戸で起きた「地獄絵図」 テレビでは放映されなかったアントニオ猪木の「108つビンタ」
年越しイベントまでの時間つなぎ
アンダーカードは年越しイベントまでの時間つなぎのつもりだったはずだが、「アマール・スロエフ対ディン・トーマス」は1R4分23秒TKOでスロエフが勝ち、「橋本友彦対アリスター・オーフレイム」は1R36秒TKOでアリスターが勝利と、前半2試合はいずれも1Rで終わってしまった。 最終試合となった女子格闘技「辻結花対カリオピ・ゲイツィドウ」は、1Rから何度もマウントポジションを奪うなど辻の楽勝ムードだったが、寝技30秒ルールに助けられたゲイツィドウが、打撃でポイントを奪い返す予想外の好勝負となった。 結果は辻が判定勝ちを収めた。 「練習も準備もしないで試合に臨んだんですけど、総合の経験はあったんで『やることやろう』って決めていました。打撃の間合いを潰して組み付いたら、膝蹴りを食らってダウン。そこからパウンドを落とされて、あっさりレフェリーストップ。ただ、それほどの重傷ではなくてホッとしました。試合後にシャワーを浴び終えたら、スタッフの人が呼びに来て、年越しイベントのために、もう一回リングに上がったんです」(橋本友彦)
猪木の「108つビンタ」が始まった
橋本の言う「年越しイベント」とは、アントニオ猪木による「年越し108つビンタ」である。入場先着108人が、リング上で猪木から直接ビンタを受けるという特典があり、前年、前々年のさいたまスーパーアリーナでも企画されるなど、猪木祭の恒例行事となっていた。 『炎のファイター』が流れる中、リング上に登場したアントニオ猪木は、出場した全選手一人一人と握手を交わし「お疲れさん」「ようやく終わるね」「よくやったね」とねぎらいの言葉をかけていた。程なく、マイクを掴んで客席に向かって言った。 「それでは、カウントダウンまでお付き合い下さい。番組が早く終わりすぎたのが、とんだ誤算でしたけどね。では、呼び上げます……」 かくして「108つビンタ」は平和的に始まったが、ここから、未曽有の大騒動になるとは誰も予想しなかったに違いない。