大晦日の神戸で起きた「地獄絵図」 テレビでは放映されなかったアントニオ猪木の「108つビンタ」
紅白歌合戦の裏で民放3局が格闘技を同時中継した2003年大晦日。なかでもTBS放映の「曙太郎対ボブ・サップ」は、23時02分に最高視聴率43・0%を記録し、同時刻35・5%の紅白を大きく上回った。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ…」母の再婚相手から性的虐待を受けた女性 2024年末に放映された紅白裏番組の民放1位がテレビ朝日「ザワつく!大晦日2024一茂良純ちさ子の会」の12・7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことを考えると、その数字がいかに異常なものだったかがわかる。だが、三つの格闘技中継のなかで最低視聴率に終わった日本テレビ『猪木祭』では、テレビには映らない阿鼻叫喚の図が繰り広げられることになった。主役はもちろん、アントニオ猪木である。話題の新刊『格闘技が紅白に勝った日』(講談社刊)からお届けする。 『格闘技が紅白に勝った日』(第8回 前編)
試合の2日前にオファーを受けたプロレスラー
2003年大晦日、神戸ウイングスタジアムで行われた猪木祭は、メインカード「藤田和之対イマム・メイフィールド」が23時前に終わったあと、アンダーカード3試合が立て続けに行われた。 第10試合に出場した橋本友彦はこう回想する。 「僕の場合、試合のオファーがあったのは、2日前の12月29日の夜です。この日は所属するプロレス団体『DDT』の年内最終興行の日で、興行が終わった頃、携帯電話に『大晦日、猪木祭に出てくんない?』って篠さんから連絡があったんです。『ファイトマネーはいくらですか』って聞いたら『100万』って言われて『出ます』って即答しました。だって、そんな高いギャラは、今までもらったことがなかったんで」 「それで、翌日の昼くらいに神戸に行きました。チェックインしたのは海沿いのめちゃくちゃいいホテルで、『えーっ、こんな豪華なホテル泊まれるの』って凄く嬉しかった。ポートピアホテル? ああ、そうだったかもしれません。到着してすぐ会見に出席して、そこで初めて試合順を聞かされました。『随分と後ろの方だなあ』って思ったのを憶えています」