【時速194キロ死亡事故】初心者なのに「加速時の圧迫感に感動」と法廷で語った被告の元少年、なぜ親は放任した
11月28日、大分地裁で「時速194キロ死亡事故」の判決が言い渡された。一般道を時速194キロで走行し、対向右折車のドライバーを死亡させたこの行為が「危険運転致死罪」にあたるかどうかに注目が集まる中、裁判所はその成立を認め、懲役8年の実刑判決を言い渡した。事故当時19歳、免許取り立ての初心者だった被告にとって「クルマ」とは何だったのか……。本件の取材を続けてきたノンフィクション作家の柳原三佳氏が、法廷で語られたスピードへの異常な執着と常習性をレポートする。 【写真7点】運転席のスペースは完全に潰されている。194キロで衝突された小柳さんの車の内部 ■ 危険運転致死罪が認められるも判決で示されたのは「軽すぎる刑」 (柳原 三佳・ノンフィクション作家) すでに多くのメディアで報じられているように、大分地裁は11月28日、「時速194キロ死亡事故」で危険運転致死罪が成立すると判断し、被告に懲役8年の実刑判決を言い渡しました。しかし、検察の求刑12年より4年も減刑されたため、遺族側は「前代未聞の常軌を逸した高速度での事故。8年はあまりに軽い」として、12月4日、大分地検に控訴を求める意見書を提出しました。 一方で、事故直後はより刑罰の軽い「過失運転致死」で起訴されながらも、遺族や支援者による訴えや署名活動を経て危険運転に訴因変更されたこと、また、過去の同種事案の多くが「過失」と判断されてきたことを思えば、この判決は意義のある内容だといえるでしょう。 しかし、たとえ被告が「危険運転致死罪」で実刑判決を受けたとしても、被害者である小柳憲さん(当時50)の命は戻りません。時速194キロという超高速度で衝突された小柳さんは、自車のシートベルトが引きちぎれるほどのダメージを受け、全身の骨を砕かれて亡くなりました。その過酷な状況については、ご遺族から寄せられた以下の手記をぜひお読みいただければと思います。 (参考記事)【時速194km死亡事故】遺族の手記を全文公開 亡き弟が生身で実証した「超高速衝突」の過酷な現実(柳原三佳:Yahoo! ニュース エキスパート ) 本件の加害者は当時19歳、運転免許を取得してからわずか1年足らずでこの事故を起こしました。11月12日に開かれた第5回公判では、被告本人と彼の父親、母親への尋問、そして最後に遺族への尋問が行われました。 教習所で交通ルールと実技を学び、試験にも合格したはずの彼が、免許取得後、なぜ短期間のうちにこれほど危険な運転をするにいたったのか……。 法廷で語られた数々の事実から、被告と車の関係性、繰り返されていた危険運転の実態、そして、そうした行為を抑止する余地はなかったのかについて、加害者、そして親の立場から考えてみたいと思います。