<安保法制>民主党・福山哲郎議員に聞く 戦争に巻き込まれる法案なのか?
どんな場合に集団的自衛権の行使ができるのか
質問:「武力行使の新3要件」に基づいて判断するので、戦争に巻き込まれることはない」という説明があります。 福山:新旧の3要件の違いを考えてみましょう。個別的自衛権の3要件は、「わが国に対する急迫不正の侵害があること」。攻撃をされたとか、陸上に侵略なり侵攻があったとか、明確にわが国に対する急迫不正の侵害があること。侵害に対して、適当な手段がない場合に、必要最小限の実力行使ができるというのが、個別的自衛権の世界です。 ところが今回、新しい3要件ではこうなります。「わが国に対する武力攻撃が発生したこと」、これは旧要件と一緒です。そして、「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し」、「これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること」。この時点で、我が国には、武力攻撃は発生していないのです。 わが国に攻撃は直接ないのに、わが国に密接な他国に攻撃があって、なおかつ、我々の国の生命や自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があれば、自衛権を発動できるという。この、明白な危険ってどんな状況ですか。明白な危険の基準は何なのか。大臣の答弁では、油が足りないとか、冷蔵庫の中で食料がどうこうとか、経済的な理由にまで言及している。 しかし、国際的に言えば集団的自衛権の行使ができるのは、あくまで軍事上の話です。それなのに、経済的な観点からも危険を認めるのか。いったいどこまで広がるのか。基準が曖昧で歯止めがないとか、集団的自衛権を行使する具体的な状況が明確でないという批判の背景はこういうことなのです。国会の審議を見ても、今のところ、はっきりとした基準は示されていません。
ホルムズ海峡での機雷除去や米艦防護について
質問:ホルムズ海峡での機雷除去や米艦防護の例については? 福山:ホルムズ海峡で戦闘行為が行われるときに機雷の掃海に行く。シーレーン(海上輸送ルート)が動かないような状況や、その場所の制海権を他国が持っている状況では、世界中の物資が輸送、供給されなくなるので、多くの国が困るはずです。そこで戦闘行為が行われてるときに、機雷掃海に行けるような状況が本当にあるのか。安倍総理は具体的に何も言ってくださらない。 政府側は「機雷の掃海は例外だと」と言う。例外を先に言う。ほかには具体的に言わない。法案の「立法事実」についてはよく分からないのです。 停戦状況であれば、日本は機雷の掃海に行っていますし(1991年ペルシャ湾における機雷の除去及びその処理)、機雷掃海の技術が高く、国際的に評価もされています。しかし、停戦前の戦闘行為が行われているときに行くという想定の蓋然性がよく分からない。 また、朝鮮半島で有事が起こり、アメリカの軍艦に乗る民間の日本人を守るために、米艦防護が必要だという。一見すると「ああ、そうだよね」と思うんですけど、一般的にアメリカの艦船に民間の人を乗せることはありません。どこに危険人物がいるか、分からないですから。艦船はまさに軍事機密のかたまりみたいなところです。 一般的に言えば、有事において、民間人を救出するときには、民間の船や航空機を使う。日本人だけでなく、各国の人を乗せて一刻も早く救出するのが基本的な対応の仕方です。日本人だけ、あるいは、アメリカ人だけをアメリカの軍艦に乗せて逃げるということではないでしょう。 各国の人が乗る、民間の航空機や民間の艦船を守りましょうという話なら、集団的自衛権の行使ではなく、別の法律の枠組みで考えるものだと思います。こうした点についても、政権からははっきりとした説明がない。私が、国会で質問をしたら、安倍総理は「じゃあ、民主党は何もやらないんでいいですか」と言われました。別の法律の枠組みでやるべきだと思います。 具体的に立法するということは、なんらかの立法事実を示し、それに対して国民の皆さんを説得して、どうしても必要だと言えばいい。いつの間にか「15事例」という議論も消えてしまうし、立法事実も明らかではなく、立憲主義にも反して、新3要件も非常に曖昧な状況です。これでは、安倍政権の進める集団的自衛権の行使を容認できません。