私が死んだら「鳥葬」にしてほしい 「日本野鳥の会」に入会したタレント磯野貴理子が語る「鳥への熱愛」
タレントの磯野貴理子さんの趣味はバードウォッチング。野鳥好きが高じて、2年前に「日本野鳥の会」にも入会した。 そんな磯野さんの愛読書の一つが、鳥の生態をエッセイにしてまとめた『カラスの早起き、スズメの寝坊:文化鳥類学のおもしろさ』(柴田敏隆著、新潮選書)だという。磯野さんに、野鳥好きになったきっかけと、同書の読みどころを聞いた。 *** ――磯野さんはいつ頃から野鳥好きになったのでしょうか。 私は三重県の田舎の生まれで、実家では毎年ツバメが巣を作っていたりして、野鳥は身近な存在でした。でも、とくに鳥に興味があったというわけではなく、鳥好きという感覚が生まれたのは、東京に出てきてからですね。 ある朝、部屋の窓を開けたら、ふと鳥の声が聞こえてきたんです。「ツツピー、ツツピー、ツツピピー」というその美しい囀りを聞いて、「何という鳥だろう」と思って調べてみたら、シジュウカラだとわかったのです。それまではスズメくらいしか気づいていなかったのに、コンクリートジャングルにもこんな可愛い鳥がいるんだなと、新鮮な思いがしました。 それを機に鳥への興味が湧き始め、外を歩いている時は「どこかに鳥がいないかな」と探すようになったりして、次第に鳥が好きになってきたのです。やがて、街を歩いていると、自然と鳥の声が聞こえてくるようになり、「これはシジュウカラだな。あっちでは、メジロが鳴いてるな」とわかるようになってきた。そうなると、日常生活がどんどん楽しくなってきました。 ――東京の都心に住んでいると、目に付くのはカラスとハトぐらいですね。 都会でよく見かけるハトは、ドバト(カワラドバト)と呼ばれるもので、じつは外来種です。もともと通信手段として人間に飼われていたものが野生化したんです。だから、どうも野鳥観賞の本流からは軽んじられる傾向があるのですが、でもよくよく観察してみるとかなり興味深い鳥ですね。 この前もパリに行ったら、日本のドバトと同じものがたくさんいました。スズメもいましたが、こちらは日本のとは違ってイエスズメという種類でした。そういう細かい違いを見分けるのも面白いですね。 ――鳥好きが高じて、ついに「日本野鳥の会」にも入会されたとか。 自分一人で鳥に対する知識をこれ以上広げるのはむずかしいと感じて、2年前に入会しました。 最近は会主催の「探鳥会」というバードウォッチングにも参加し、詳しい方々にいろいろ教えて頂いています。先日も20人くらいで東京湾の一番奥にある三番瀬という干潟に行ってきました。渡り鳥たちの採餌、休息の場として大切な干潟で、一時は埋め立ての危機にさらされたものの、環境保護団体や市民による保全運動のおかげで何とか残された場所です。 大陸から飛んできたシギチドリ、カモメ、ミヤコドリなどがいっぱい羽を休めています。渡り鳥は国境とか関係なく飛んでくるので、三番瀬を埋め立ててしまうと、彼らが飛んでくる場所がなくなってします。地球レベルで鳥が生きられる自然環境を考えなければいけない実例ではないかと思いました。 ――磯野さんが愛読書にしている『カラスの早起き、スズメの寝坊』の著者・柴田敏隆さんも、「日本野鳥の会」の機関誌『野鳥』の編集をされていたそうですね。 柴田さんは2014年に亡くなられたので、残念ながら私は直接の面識はありません。柴田さんは横須賀市博物館学芸員、山階鳥類研究所資料室長を勤められた一方で、NHKテレビ「茶の間の科学」「ポケットサイエンス」に長く出演し、ユニークな語り口で人気を博されたそうです。 柴田さんのこの本は、タイトルからして、早起きの私には頷けるものでした。私は3時くらいに目が覚めるのですが、カラスはまだ真っ暗なうちに鳴き始めます。それに比べて、スズメは朝日が昇る頃にようやくチュンチュン鳴き始める。まさに「カラスの早起き、スズメの寝坊」という題名の通りです。 このように柴田さんの本には、鳥に関する興味深いうんちくや、くすくすっと笑えるエピソードが随所にちりばめられていて、私のような鳥好きにはたまらない内容です。専門的な内容を扱っていても、一つ一つの文章がとても読みやすく、20年も前に出版されているのに、まったく古さを感じさせません。