<孤独死の打開策になるか?>増加する独居高齢者の幸せな生活実現にソーシャル・キャピタルを活かせ
2024年4月、「孤独・孤立対策推進法」が施行された。日常あるいは社会生活において孤独を覚えたり、社会から孤立して心身に悪影響を受けたりしている人への支援などに関する取組みについて、基本理念・国等の責務・施策の基本となる事項および対策推進本部の設置などを定めるものだ。独居高齢者が増加しているなか、孤独・孤立の問題を個人ではなく社会全体の問題・責任とし、幸せな生活の実現が望まれている。 【図解】地域の豊かさに関するソーシャル・キャピタルのイメージ いま、生活維持に寄与する助け合いや協力というファクターとして、信頼・つながり・ネットワークなどを表す「ソーシャル・キャピタル」が注目されているが、首都圏や近畿圏で比較的割合の高い「孤独死」の打開策になるのだろうか。2022年1月28日に掲載した『東京で多い孤独死 ソーシャル・キャピタルが解決のカギ』を再掲する。 このシリーズでは、高齢化が進行する地方の持続可能性の問題を主に生産面から考えてきた。そこでは、高齢者の就業(第1回「都市VS地方 今や「地域力」は人口だけでは測れない」)、女性の就業(第2回「中核地域の宮城と広島 出生率がこれだけ違うのはなぜ?」)の他、都市の就業者の源泉としての地方出身者(第3回「対立か共生か 地方VS東京圏」)などを検討してきた。 これらでは、暗黙裡にわれわれの生活を支える財やサービスなどの資源は、主として市場経済を通じて調達されているという前提に立っていた。 この考え方からすれば、高齢化や過疎化が極端に進んだ地方では、もはや生産活動や市場経済が成立せず、持続可能性は極めて小さいということになってしまう。しかし、時折テレビの紀行番組などを見ると、いわゆる限界集落や過疎地域と呼ばれる地域や集落から離れた地区に1人で暮らす高齢者が元気に生活しているさまが紹介されている。 ここから感じることは、どうやら地方の持続可能性に影響を及ぼす要素は、市場経済で調達される資源だけではないようであるということである。そこで、今回は、地方の持続可能性の考えるうえで、市場経済以外すなわち「非市場」経済で調達される資源の存在に焦点を当てることとする。