<孤独死の打開策になるか?>増加する独居高齢者の幸せな生活実現にソーシャル・キャピタルを活かせ
ソーシャル・キャピタルが及ぼす社会への影響
ソーシャル・キャピタルの存在が、非市場的な日常生活へどの程度影響しているかを測るため、ここでは「孤独死」の比率を見てみる。地域にソーシャル・キャピタルが存在し、近隣との交流や信頼関係があれば、誰も知らぬ間に亡くなり事後に発見されるという孤独死は避けられると考えられるからだ。 孤独死には法的な定義がなく、公式の統計値がないため、「立会人のいない死亡者数」で代用されている。この「立会人のいない死亡」は死亡時に立会人がおらず、死因が特定できないケースを指している。したがって、孤独死(立会人のいない死亡)であっても死亡原因が特定された場合は、該当しないので、数値の解釈には注意が必要である。 図3は、国土交通省が出生や死亡をとりまとめる「人口動態統計」をもとに作成した、人口10万人当たりの「立会人のいない死亡」(孤独死)の状況である。 東京都で圧倒的に孤独死(立会人のない死亡)の割合が高いことが分かる。全国平均値が1.75であるのに対し、首都圏や近畿圏で孤独死が比較的高い。また、表2でソーシャル・キャピタルが高いとされた福井県の孤独死はかなり小さいこともわかる。しかし、ソーシャル・キャピタル指数が小さいとされた北海道は、孤独死の割合が全国平均より低く、逆に高いとされた山形県では孤独死の割合が全国平均より高いという例外も見られる。
人とのつながりは詐欺被害を減らせるのか
次に、ソーシャル・キャピタルと特殊詐欺について見てみる。ニュースなどで、コンビニエンスストアの店員や銀行の行員が、詐欺被害にあわんとする高齢者の様子を見て声をかけ、被害を未然に防いだというような事例が紹介されることがある。困っている様子の見知らぬ人に対して、声をかけ援助を申し出るということは、ソーシャル・キャピタルの大きな側面の1つである。 表3は警察庁が発表した20年の都道府県別特殊詐欺(いわゆるオレオレ詐欺、架空請求詐欺、還付金詐欺など)認知件数を、20年10月1日付の都道府県人口で除し、人口100万人当たりの特殊詐欺認知件数上位5県と、下位5県を示したものである。 人口100万人当たり特殊詐欺認知件数は、東京都をはじめとした大都市圏で発生が多く、表2でソーシャル・キャピタルの高いとされた、山形県、福井県、熊本県を含む地方で発生が小さくなっている。ソーシャル・キャピタルがすべての犯罪を抑止するものではないが、特に高齢者を地域で見守るということは、ソーシャル・キャピタルが役割を果たせる大きな側面と言える。