<孤独死の打開策になるか?>増加する独居高齢者の幸せな生活実現にソーシャル・キャピタルを活かせ
重要な要素となる「ソーシャル・キャピタル」
限界集落や過疎地域、単独で暮らしている住民は、陸の無人島でロビンソンクルーソーのような暮らしをしているわけではない。住民同士の日常の交流を通じて、財やサービスを無償で交換したり、助け合っていたりする。このように、貨幣以外の方法で、生活維持に寄与する助け合いや協力というファクターとしては、「ソーシャル・キャピタル」が注目される。 ソーシャル・キャピタルを直訳すると、「ソーシャル=社会(的な)」、「キャピタル=資本」であり、「社会資本」ということになる。われわれが日常生活で「社会資本」という呼び方をするものとしては、橋や道路、空港や上下水道のような公共性の高い資本設備をさす場合が多い。 社会的な役割の大きな資本であり、社会全体で所有しているという意味もこめて「社会資本」と呼ばれている側面があろう。しかし、これらの資本は、公的な主体が公共事業などを通じて形成した公有の資本であり、国際的には社会資本とは言わず「公共資本」(パブリック・キャピタル)と呼ばれる。 これに対して、今回問題としているソーシャル・キャピタルは、橋や道路のような実物的な資本ではなく、地域の人々の間に培われている信頼、規範、協働(ネットワーク)のような目に見えない価値としての資本である。したがって、地域の生活を維持するための財やサービスを作り出す要素して、(1)就業者(労働力)、(2)物的な資本(生産設備や公共資本)の他に、今あげた(3)ソーシャル・キャピタルも、重要な役割を果たしているという考え方が成り立つ。
もし、その地域での生活維持に必要な財やサービスの水準がこの目に見えないソーシャル・キャピタルの存在によって影響されるとすれば、地域ごとのソーシャル・キャピタルの存在は改めて注目に値することになる。すなわち、いくら就業者が多く、物的な資本に恵まれていても、ソーシャル・キャピタルが小さな地域では結果として実現される地域の資源は制約を受ける可能性がある。 これは図1の地域AとBの比較で示している。地域Aは労働力も資本設備も恵まれた地域であるが、ソーシャル・キャピタルが1だけしか存在しないため、結果として、労働力も資本設備も地域Aより小さな地域Bの方が社会資本4によって豊かさが大きいと言うこともできる。