<孤独死の打開策になるか?>増加する独居高齢者の幸せな生活実現にソーシャル・キャピタルを活かせ
日本のソーシャル・キャピタルランク143位という衝撃
ソーシャル・キャピタルの構成要素に関する国際的な研究事例としては英国のシンクタンクが公表しているThe Legatum Prosperity Index(2021) 「レガタム繁栄指数」があげられる。これは、世界各国の繁栄度(豊かさ)をさまざまな指標から算出して示している。 この繁栄指標は、(1)市民を排除せずに社会の一員として取り込む「社会的包摂性(インクルーシブソサイアティ)」、(2)開かれた経済、(3)個人に力を与える環境を表す「エンパワードピープル」の3つの分野から構成され、それぞれの分野で、(1)は「社会的安全性」「個人の自由」「社会の統治」「ソーシャル・キャピタル」、(2)は「投資環境」「起業しやすさ」「市場へのアクセス」「経済的な質」、(3)は「住環境」「教育」「健康」「自然環境」と評価項目が提示されている(図2)。 「ソーシャル・キャピタル」は他の社会的安全性、個人の自由、社会の統治とともに(1)の社会的包摂性を構成する柱として位置づけられている。そして、ソーシャル・キャピタルは表1にあげるような5つの項目で構成されている。
このレガタム繁栄指標の2021年版では日本のランキングは167カ国中19位であった。指標を構成する個別の項目を見ると、健康では、世界第1位のランキングを得ている。また、その他の項目(経済面など)についても、日本はいずれも1桁か悪くとも30位代にランキングされている。しかし、日本の「ソーシャル・キャピタル」に関するランキングだけは143位とかなり低くなっている。
地方はソーシャル・キャピタルが高く、都市は低い傾向
世界における日本のソーシャル・キャピタルは、まだまだ改善の余地がある。では、日本国内の地域別のソーシャル・キャピタル状況はどのようになっているのであろうか。これにかかわる研究としては、滋賀大学・内閣府経済社会総合研究所 共同研究(2016)の「ソーシャル・キャピタルの豊かさを生かした地域活性化」があげられる。 同研究では、全国の2万3883人の個人にアンケート調査を行い、その回答からソーシャル・キャピタルの構成要素として「つきあい・交流指数」「信頼指数」「社会参加指数」の3つの要素を集計し、ソーシャル・キャピタル統合指数を試算している。 表2には、同研究報告書からソーシャル・キャピタルの統合指数が高いとされている上位5都道府県と低いとされた下位5都道府県を示している。これを見ると、最も指標が高いという計算結果となった福井県と最も指標が低いとなった北海道の間には8ポイント余りの差があることが分かる。そして、高いとされている地域はいずれも地方部の県であり、低いとされている都道府県は、いずれも政令指定都市を擁する地域である。 同報告書では、地域の人口増加率別にもソーシャル・キャピタル統合指標を集計し、ソーシャル・キャピタルは、「人口増加率が高い地域ほど低く、人口減少率が高い地域ほど高い傾向」にあると指摘している。地方部には地域の持続可能性に影響を及ぼすソーシャル・キャピタルが相対的に多く存在していることが分かる。