90歳医師が考える超高齢者のがんとの向き合い方「なるようになるだろうという心境」
90歳を迎えた今も現役医師として週4日高齢者施設で働いている折茂肇医師。年相応に持病があり、糖尿病で通院し、2年前に小脳梗塞を起こして1カ月ほど入院した。がんの心配もあるが「なるようになるだろうという心境」だという。超高齢者はがんとどう向き合うべきか、折茂医師の考えとは? 【動画】90歳現役の折茂肇医師の回診の様子とインタビューはこちら 折茂医師は、東京大学医学部老年病学教室の元教授で、日本老年医学会理事長を務めていた老年医学の第一人者。自立した高齢者として日々を生き生きと過ごすための一助になればと、自身の経験を交えながら快く老いる方法を紹介した著書『90歳現役医師が実践する ほったらかし快老術』(朝日新書)を発刊した。同書から一部抜粋してお届けする(第11回)。 * * * 私自身も90歳になり、人並みに病気を抱えている。まず、糖尿病がある。3カ月に一度、病院に通っており、糖尿病と高血圧の治療薬を服用している。 また、2年前に小脳梗塞を起こして1カ月ほど入院した。早期に見つけることができたため点滴治療で改善したが、後遺症として歩行障害が残った。それまでは自分の足でちゃんと歩けていたが、小脳梗塞を経験した後は歩くときには杖を使うようになり、ゆっくりとしか歩けなくなってしまった。不自由ではある。でも、それ以外の後遺症は何もなく、会話をしたり、字を書いたり、食事をしたりするのには全く支障がない。それは非常に幸運だったと思っている。 ほかにも、前立腺の病気があり経過観察を続けているが、最近、腫瘍マーカーの数値が高くなっており、がんかもしれないと考えている。 高齢者の前立腺がんは非常に多く、また前立腺がんのなかには進行がゆっくりで、寿命に影響しないタイプもあるため、あまり深刻には考えていない。多くのがんが5年生存率という指標で「治った」と判断されるのに対して、進行がゆっくりである前立腺がんは10年生存率で判断されることが多い。国立がん研究センターが発表した「院内がん登録2011年10年生存率集計」によると、前立腺がんの10 年生存率は85・4%。90歳が100歳になると考えれば、私見にはなるが、前立腺がんはそれほど怖いがんには思えない。