英紙はサウサンプトン南野拓実の鮮烈な移籍デビューを「動きにまったくミスのない完璧なゴール!」と称える
利き足とは逆の左足を迷わずに振り抜いた。出場機会に、そして結果に飢えていた南野拓実の視界に入っていたのは、ニューカッスル・ユナイテッドのゴールマウスだけだった。 冷たい雨が降り続く敵地セント・ジェームズ・パークで、日本時間7日未明に行われたイングランド・プレミアリーグ第23節。新天地サウサンプトンへ電撃的に加入した日本代表の「10番」が、左サイドハーフとしてデビューした一戦であいさつ代わりの豪快なゴールを叩き込んだ。 ニューカッスルに2点のリードを奪われて迎えた前半30分だった。左サイドを攻め上がった元イングランド代表の左サイドバック、ライアン・バートランドが斜め右前方へ、グラウンダーの速いパスを通す。反応したのは中央寄りにポジションを取っていた南野だった。 スピードに乗った体勢で右足を伸ばし、タッチしたボールを前方へ押し出しながらペナルティーエリア内の左側へ侵入していく。一瞬の出来事にMFアイザック・ヘイデン、DFエミル・クラフトはまったく反応できないまま、自分たちの間をすり抜けていった南野を見送るしかなかった。 もっとも、雨水が溜まりかけていたピッチも影響したのか。直後に南野もバランスを崩しかけたが必死にこらえ、シュートの体勢に入る。次の瞬間、左足から放たれた強烈な一撃がニューカッスルの守護神、カール・ダーロウの右側の肩口とゴールポストのわずかな間を射抜いていった。 ゴールネットの上部に突き刺さる追撃の一発を見届けた南野は、両方の拳を小さく握り締めながら雄叫びをあげた。アシストしたバートランドが、チーム得点王のイングランド代表FWダニー・イングスが駆け寄ってくる。顔を合わせてまもない仲間たちからの信頼をも勝ち取った瞬間だった。 プレミアリーグの今冬の移籍期間の最終日となった今月1日に、突然届いたサウサンプトンからのオファーを即決で受け入れた。ヨーロッパを代表するビッグクラブ、リバプールの一員になって1年あまり。昨シーズンのプレミアリーグ制覇を経験しても、ハイレベルな仲間たちとの練習でさまざまなものを吸収しても、出場機会を得られなかった南野の脳裏には常に危機感が駆け巡っていた。 「正直、いまの自分の立場といったものに、まったく満足していません」