日本の技能実習制度に一定の評価も:OECDの労働移民政策報告書
技能実習制度への「評価」
国際的な視点から見た技能実習制度の特徴は何であろうか。本報告書ではこれを以下の3つの点に要約している。(1)研修と試験が制度の中核となっている、(2)監理団体など複数のアクターが関与している、(3)移住仲介機能に関するコストを、雇用主からの手数料で賄っている。 報告書は、国際的に見て非専門職を対象とした「期限付き労働移住プログラム」においては、研修や試験といった要素は通常含まれないことを指摘している。なぜなら、こういったプログラムにおいては、一定の職を一定期間こなすことのみが期待されており、研修や試験を通じた技能形成やその確認といったことは想定されていないためである。 技能実習制度における研修はもっぱら実地研修(OJT)によって行われており、これは清潔さや規律といったソフトスキルを重んじる日本型雇用の特徴である、と報告書は指摘している。技能検定がより実態に沿ったものとなることを今後の課題としつつも、これは技能形成を建前論として扱う従来の議論とは異なる視点といえる。 2点目として挙げられるのが、監理団体など複数のアクターが関わっているということである。報告書では、OECD加盟国の多くの「期限付き労働移住プログラム」では、入国前の承認プロセスに公的機関が強く関与しているが、移民が到着し、就労開始のための書類を受け取った後は、ほとんどの全てのケースで公的機関が雇用主と被雇用者の間の関係から一歩引いているとしている。 一方、技能実習制度では、雇用主である実習実施先に加え、監理団体、送り出し国の送り出し機関、そして「外国人技能実習機構」(法務省と厚生労働省が所管する認可法人)が関与することで、労働者を多重に保護している。本報告書においては、こうした多重のサポート体制が責任の所在をあいまいにするというリスクも指摘しつつも、人権保護といった観点から今後も維持されるべきとしている。これは監理団体などの仲介機能こそが、諸悪の根源であるとしてきたこれまでの議論とは大きく異なるものといえよう。 3つ目は、技能実習制度では実習と監督にかかわるさまざまなコストを公的支出ではなく、もっぱら雇用主からの手数料で賄っているという点である。こういった費用は雇用主において小さなものではなく、本報告書ではこれを技能実習生の人件費全体の11-25%に相当するし、その結果、技能実習生を雇用する単位労働コストは同程度の属性を持つ日本人非正規雇用者を雇用する場合より4%高いことを明らかにしている。これは技能実習生を「安価」な、「使い捨ての労働力」として捉える従来の議論が間違いであることを端的に示すものである。