日本の技能実習制度に一定の評価も:OECDの労働移民政策報告書
今後の課題
もちろん、本報告書は技能実習制度には依然として多くの課題があるとしている。その中でも最大の課題は「期限付き労働移住プログラム」から長期滞在への移行をいかに円滑に行うかということである。その際、カギとなるのは、家族帯同、及び統合政策の充実、並びに技能実習制度、及び特定技能制度をスキルズ・モビリティ・パートナーシップ(Skills Mobility Partnership)(※2)としていかに発展させていくかという点であるとしている。 前者については、今後、技能実習から特定技能(特定の産業分野で、相当程度の知識や経験が必要な技能を要する業務に従事する在留資格)1号、そして2号へと移行していくにつれ、家族帯同をする者が大幅に増えていくであろうという見通しに基づくものである。その際、重要になるのは生活を安定させるための手段としての配偶者の労働市場へのアクセスの改善、及びそれに伴う子どもの教育などのさまざまな補完的な統合政策であるとしている。 スキルズ・モビリティ・パートナーシップとは、受け入れ国が出身国の訓練に投資し、その人材育成に貢献するとともに、受け入れ国での雇用にもつなげるという、国際協力と労働力確保の両者を同時に達成することを目指すものであり、近年、世界銀行やOECDといった国際機関によって提唱されている新たな政策類型(※3)である。 本報告書では技能実習制度と特定技能制度が一体的に運用される中で、スキルズ・モビリティ・パートナーシップとしての役割を果たす可能性を指摘している。それにあたって、もっとも大きな課題とされているのが、帰国後の技能のポータビリティ(持ち運び)である。これは日本で取得した技能検定といった資格証明が国際的に認められる資格の相互認証制度となることなどが念頭に置かれている。
グローバルな視点での議論を
以上のように本報告書は主に国内的な視点からの議論に終始してきたこれまでの日本の外国人労働者政策論にはない、新たな視点が数多く含まれている。これはひとえに国際的な観点から常に労働移民政策を分析しているOECDの知見があってのことといえる。本報告書によって今後、より深刻な人手不足を経験する日本の労働移民政策がよりよいものとなることが期待される。