【新潟2歳S回顧】例年と違う“渋い展開”だからこそ価値あり トータルクラリティが示した「持続力」という強み
母の才能を引き出すキングカメハメハの系統
2着コートアリシアンは一旦、先頭に立ちながら最後に差しかえされた。ゲートで遅れをとった分、仕掛けて前につけたため勢いがつき、行きたがってしまった。コーナリングもぎこちなく、勝負所までに消耗した分、最後に力尽きた。 レース内容は荒削りにもかかわらず、一旦先頭から2着確保とスケール感は示せた。東京の新馬を上がり33.3で差し切った切れ味が身上。最後に根性を試されるレースは厳しかったか。とはいえ、適性から外れた競馬でも2着は確保したので、悲観することはない。 母コートシャルマンはデビュー3戦目の阪神JFで3番人気に支持された才女。母はその母の父スマートストライクの色が濃かったが、コートアリシアンは父系のキングカメハメハを感じさせる。 父ロードカナロアも牝馬の活躍馬が多く、サートゥルナーリア産駒も8月18日までの記録をみると、全6勝のうち5勝が牝馬。仕上がりが早く、瞬発力に長ける牝馬と相性がいい。 3着プロクレイアは4コーナー10番手から追い込んできた。道中は抑えながらの追走で、まだ位置をとりに行けない難しさはありそうだが、最後は進路を探して外に移動し追い込んだ。 横に動きながらの追い込みであり、実際の差は字面ほどない。フサイチエアデール、ライラプスの母系で、ちょっと勝ち身に遅い一族の出。エピファネイアも似たような産駒が多く、今後は自己条件であっても惜敗を繰り返す危険性があるものの、能力の一端は示した。 例年ほど派手な記録が出なかったレースだが、持続力が問われる渋い展開であったことは覚えておこう。似たような競馬になった22年勝ち馬キタウイングはその後、重賞2勝目を11番人気であげた。今年も好走馬を追いかけてみたい。 ライタープロフィール 勝木 淳 競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
勝木淳