今季限りで浦和退団の宇賀神はどんな思いで天皇杯決勝進出のヒーローになったのか…「あなた方は間違っていたと証明してやる」
しかし、いざリカルド・ロドリゲス監督へ直談判しようとなると、決まって同じ光景が脳裏に浮かび上がってくる。 中学生年代のジュニアーズから心技体を磨くもトップ-ムに昇格できず、流通経済大での4年間をへて念願の加入を果たした2010シーズン以来、常に自らを鼓舞してくれた浦和のファン・サポーターの存在だった。 「最後に頭に浮かんでくるのは、支えてくれるファン・サポーターに浦和レッズの自分を見てもらう、自分を覚えていてもらうチャンスがあるのであれば、もう一度気持ちを奮い立たせて埼玉スタジアムのピッチに立つこと。それがプロサッカー選手として、そして浦和レッズの人間としてできる最大のパフォーマンスなんじゃないかなと」 もっとも、一度萎んだ闘争心を蘇らせるのは、決して容易な作業ではない。セレッソ戦が迫ってきたなかで、宇賀神はあえて自分の気持ちを“黒色”に染めた。 「ちょっと悪い言い方になりますけど、自分を契約満了にした決断を下した人たちを見返してやると、あなた方は間違っていたと証明してやると強い気持ちをもってピッチに立ちました。試合後のヒーローインタビューでも言いましたし、なぜそんなことを言うのか、と思う方もいるかもしれないけど、僕はそういう人間なので」 オンライン会見でも宇賀神はちょっぴり悪ぶった素振りを見せた。ただ、本気の言葉ではないことは痛いほどに伝わってきた。契約満了に伴う退団が発表されてから3日後の11月21日。オンライン会見に臨んだ宇賀神はこんな言葉を残している。 「このクラブに対する愛情は、常に誰にも負けないと思っているので」 宇賀神の退団に先駆けて、キャプテンを務める40歳のMF阿部勇樹の現役引退と、10年間も最終ラインを担ってきた34歳のDF槙野智章の退団が発表されていた。 J1リーグで293試合に出場した宇賀神を含めて、ひとつの時代の終焉を告げる功労者たちとの別れ。今シーズンから浦和を率いるリカルド・ロドリゲス監督は「プロとして決断を下さなければならなかった」と、目を潤ませながら理由を紡いでいる。 「サッカーにはサイクルがあり、すべての選手に引退や退団というタイミングが訪れる。私が来た当初から年齢が高いチームだと感じていたなかで、徐々に世代交代を進めながら未来の浦和レッズをしっかりと作っていかなければいけない」 通告された当初はショックの方がはるかに大きかったものの、断腸の思いで下された契約満了というクラブ側の決断は尊重しなければいけない。同時に契約期間中に出場機会を得られれば、全身全霊のプレーを介して浦和の勝利に貢献する。