アート・バーゼルとパリの組み合わせが最強かもしれない理由
1900年の万国博覧会のために建設されたパリのランドマーク、グラン・パレのシンボルである巨大なガラス屋根から、秋とは思えない陽光が降り注ぐ。10月16日、「アート・バーゼル・パリ」のVIPプレビューの日を迎えたグラン・パレは、世界各国から集まったコレクター、アーティスト、美術館関係者、セレブリティなど多くの来場者とともに華やかな熱気に包まれた。 来場者がスマートフォンやカメラを向ける先は、パリ五輪のために3年の改装を経て美しく蘇ったグラン・パレの建築。ミントグリーンの鉄とガラスで覆われたガラスの大屋根や壮麗な大階段など、アートフェアで大勢がアート作品以外の被写体にカメラを向ける光景に驚いた。 2022年、2023年に仮設会場グランパレ・エフェメールで開催された「パリ・プラス(Paris+ par Art Basel)」が「アート・バーゼル・パリ」と改称し、10月18日~20日(16日と17日はVIPプレビュー)に開催されたフェアには、現地フランスでギャラリーを運営する65ギャラリーを含め、42の国と地域から195のギャラリーが集まった。 メインセクトの「ギャラリー」ではルイーズ・ブルジョワ、ウィレム・デ・クーニング、ゲルハルト・リヒター、草間彌生、李禹煥など、20世紀の巨匠から世界的な現代美術家、さらに新進気鋭の作家など高い評価を誇るアーティストの作品が展示され、会期全体で6万5000人以上が来場。 グラン・パレのみでなくプチ・パレ、コンコルド広場、パレ・ロワイヤル、ヴァンドーム広場などパリの誇る美しいランドマークにも、ギャラリーが提供する現代アート作品が展示され、夏の五輪さながら、パリ市街を舞台にアートの祭典が繰り広げられた。 アート・バーゼル・パリのレポートの前に、その成り立ちを説明しておこう。アート・バーゼルが「パリプラス」としてパリに進出を果たすわずか一年前まで、芸術の秋のパリの風物詩といえば10月に開催される現代アートフェアFIAC(Foire Internationale d'Art Contemporain)と11月に開催される写真に特化したパリフォト(Paris Photo)だった。 共にフランスおよび世界各地で見本市を開催しているRXフランスが主催する国際商業フェアで、FIACは70年代からグラン・パレを会場にしてきた歴史あるアートフェアだが、2021年を最後に開催されていない。アートバーゼルの運営会社であるMCHが、その後7年間の使用権を落札したためだ。