<独占インタビュー2>羽根田が明かす賞金大会ゼロのカヌー界の現実
カヌースラロームのカナディアンシングルで史上初の銅メダルを獲得した、羽根田卓也(29、ミキハウス)の独占インタビューの第2回は<エコロジー・タクヤ>と呼ばれている競技環境について聞いた。 ――欧州の強豪選手はプロですか? ワールドカップなどで賞金は出るんですか? 「カヌーではワールドカップには賞金はなく、世界選手権も含めて国際大会に賞金の類は一切ありません。強豪国のほとんどは、国がサポートしています。国の下にあるスポーツクラブに所属していて、スポンサーを集める必要もなく、合宿費を払うこともなく、カヌーを自分で買う必要もありません。フランスでも、イギリスでも、トップ選手はそうです。 具体的にどれくらいの金額を年俸としてもらっているかはわかりません。おそらく、プロテニス選手並みの金額はもらっていないでしょうが、余裕で生活をして、カヌーだけに集中できるくらいの金額はもらっているようです。だから僕は、他の国の選手や関係者から、五輪出場選手の中で一番安くて、お金のかかってない選手。エコロジーだ!と言われるんです」 ――“エコロジー・タクヤ”ですか? リオ五輪の艇も自分で? 「もちろん。選手によって好みがあるんですが、僕は五輪用に、ワールドカップに出場する今年の6月に購入しました。レースを繰り返すと、細かいすり傷がつくので、なるべく傷がつかず、かつ慣れる期間を取れるようにしました。トップ選手は、1年に1艇は買い替えます。現地で20万円、日本で買えば30万円くらい」 ――それにしても笑えないニックネームですね。自分では置かれた立場をどう思いますか? 「まあ、しょうがないんです。日本で北京五輪からロンドン五輪にかけて、いろんなところにスポンサー援助のお願いをしましたが、難しかった。アスリートとしてのインパクトに欠けていました。『次の五輪でメダルをとります!』と言っても現実味のない成績ばかりでしたからね。 ロンドン五輪後は、地元の愛知を中心に10社くらいに社長宛に手紙を書きましたが、どこからも返事がなく、返事をいただいたのは、地元でななかったのですが、ミキハウスの木村社長だけだったんです」 ――メダルを取ります!と手紙に書いたのですか? 「いえ、自己目標を達成したい、それを応援していただけないか、というような話を書いたと思います。本当に感謝しています」