ブレイブルーパス運営の異色な男たち ラグビーとは無縁の社長が経営立て直し
■収益は右肩上がりに リーグワン初優勝も
星野氏は、高校は桐蔭学園、大学は立命館で楕円球を追い掛け、卒業後は電通に入社。10年勤めた後、ラグビーに関わりたいという夢を諦めきれず電通を退社、コーチングを学ぶため筑波の大学院に編入した。大学院を経て静岡聖光学院の教員となると、わずか3年でラグビー部を初めての花園出場に導く。その手腕を買われアンダー世代の日本代表監督に抜擢され、静岡聖光学園では、学校長まで務めたという、異色の経歴の持ち主だ。 独立採算を目指す法人化という荒海にこぎ出したブレイブルーパス。そして「ラグビーをビジネスとして成功させる」という荒岡氏の理想に共感した星野氏。異色の経歴だからこその豊富な知識とアイデアで荒岡氏と共に経営の立て直しをはかっていく。 まず行ったのは意識改革。チームとフロント、それぞれに目標を掲げていた組織をワンチームとすべく、明確に目で見えるよう指針を言語化。それが「猛勇狼士」である。 また情報発信も積極的に行い、マスコミに取り上げてもらえるよう毎月の定例会見を開くようになった。選手にはプロ意識が芽生えるようメディア露出も多く促していった。収益をあげる施策も次々とヒット。ファンを増やすためユニークで魅力のあるイベントや企画を実施していく。 ブレイブルーパスのラグビーといえば「接点無双」。体と体のぶつかり合いを観客に生々しく伝えるためテレビ中継とは別に、独自でピッチサイドに複数のマイクを設置。肉体がぶつかり合うリアルな音をスタジアムに響かせるという「リアル・グラウンド・サウンドシステム」を作り上げた。 また多くのファンを獲得した要因のひとつとして「ファミリーロード」が挙げられる。ファンクラブ会員限定ではあるが、ホストゲームの試合後に、メンバー・ノンメンバーすべての選手で花道を作り、観客と触れ合いながら送り出しをしていくファンサービスだ。 荒岡氏の熱意と経営力、それを支える星野氏の手腕で収益は右肩上がりに。さらに法人化から3年、最大の目標を実現させる。リーグワン初優勝だ。 荒岡社長 「選手は練習だけしていればいいという形ではなくて、事業側の方も彼らと意見交換をして、ゲーム日数に支障が出ない範囲で彼らも関わってくれるようになって、そういう意識を持ってくれていたというのは、彼らもプロ意識が高まって、それは優勝に結びついた要因の中の一つだと私は確信しています」 ビジネスモデルの1つの成功例となった東芝ブレイブルーパス東京。そのフロント陣はラグビー界に勇気を与えるべく、次のシーズンに臨む。