選ぶ基準は「長く使えるか」、料理研究家の大庭英子さんが使い続ける働き者の調理道具たち。
無理せず心地よく暮らすためにやること、やらないこと。
なんでもないようですごくいいものは、家のそこかしこに。
キッチンとダイニングを緩やかに仕切っているカウンターは、40年以上前に新宿の百貨店で買ったもので、どこのブランドともわからない。キャスターが付いていて可動式、天板を引き出してエクスパンションできたり、さりげなく横にフックが付いていたりと、細やかな工夫がたくさん施されているのが、いかにも職人気質の仕事らしくて好もしい。
「当時、そんなに高価ではなかったはずだけど、なにしろ40年前だから記憶が曖昧です。でも、これ、いいでしょう? 私が長く使っているものの筆頭かもしれませんね」 キッチン戸棚の中には、乾物や香辛料が揃いの瓶に入って並べられている。この瓶もごく普通のものだけど、数をたくさん揃えられること、蓋だけ買い足せることなどが選んだ理由。 「透明の瓶に入れておくと中身の減り具合がひと目でわかります。いろいろな瓶があるのがどうにも嫌で、同じ瓶で揃えたらすっきりしました」 シンプルなものや手仕事の道具が好き。家事にストイックなように見える大庭さんだが、ラクをすることだって否定はしない。 「道具は生活を助けてくれるもの。何が億劫かは、人によって違うのではないでしょうか。たとえば、私はエプロンに糊をつけてアイロンがけします。大変でしょうとよく驚かれるのですが、私自身はそれほど大変だと感じていないからやっているわけで。でも、床掃除はルンバに頼っているし、換気扇や浴室の大掃除などはプロに外注することもありますよ」 快適に暮らすための取捨選択。大庭さんのように、自分が「すっきりする」感覚を研ぎ澄ませていきたい。
大庭 英子 さん おおば・えいこ 料理研究家 料理研究家歴40年以上。素材を生かした作りやすいレシピが人気。ひとり暮らしの食生活とレシピを綴った最新刊『71歳、ひとり暮らし。愉しい定食』など、著書多数。
撮影・徳永 彩(KiKi inc.) 文・黒澤 彩
『クロワッサン』1125号より
クロワッサン オンライン