鈴木えみが性教育を発信する思い。被害者も加害者も生まない社会を #性のギモン
── 親子間の信頼関係や、自分と他者の気持ちを受容する姿勢を育むことが、性教育につながると。 そうですね。そうした意味では、子どもから質問をされたら必ず真実を伝える、ということもルールにしています。例えば、悲しい性犯罪のニュースであっても、質問があれば何があったのか説明するんです。もちろん、彼女が受け入れられる範囲の言葉に変換する工夫は必須ですが。はぐらかさずに真正面から向き合うことは、親子の信頼関係につながりますし、娘自身も受け止め上手になってきたなと感じます。 ── 受け止め上手とは? 社会の一員として、そこで起こっている事実に目を向ける。そしてそこから何を感じたのか咀嚼しながら、自分の感情や考えに向き合う。その積み重ねによって、先ほどのドライヤーの話にも通じますが、自分の気持ちをごまかさずに受け入れられるようになっていくのではと思います。今の彼女は、周囲のことも尊重しつつ、決して無理はしない。はたから見ていても、自分のペースで生きられる人になってきたように感じています。
性教育はみんなで取り組まないと意味がない
── 今年から始めた、親子のための性教育イベント「Family Heart Talks~幼少期からの『いのちの授業』」。この企画の発起人となったのには、どういう経緯が? 4年前に、わが家にあった性教育の絵本の写真を撮って、Instagramに投稿してみたら、想像以上の反応があったんです。「こういう情報を共有してくれてうれしい」というコメントをたくさんいただいて。その後、Instagramのストーリー機能でアンケートをとってみると、「子どもに、どうやって性教育をすればいいのかわからない」と答えた人が64%いたんです。それに対して、何か自分にもできないかなとずっと思っていました。 そのことを去年、友人に話してみたら、偶然同じ課題感を持っていることがわかって。その友人がまた別の友人に声をかけてくれて、チームができました。打ち合わせを重ねて、それぞれが得意なことをかけ合わせた結果が、今行っているリアルイベントの形だったんです。 ── イベントでは具体的にどんなことを行うのですか。 おもな対象は、3~8歳くらいの子どもたちと保護者の方々。前半と後半とで、プログラムの内容を分けています。 前半の60分は保護者に向けたQ&Aコーナー。性教育をする上で、迷ったり悩んだりしていることを質問してもらい、産婦人科医や助産師などのプロと一緒に対処法を考えます。この間、子どもたちは別の部屋でダンスや折り紙・新聞紙を使った遊びなど、プロの講師によるワークショップで、思いっきり楽しんでもらいます。 そして後半30分は、子どもたちも一緒に、プライベートゾーンについて学んだり、性犯罪や性暴力から逃れるために覚えておきたい合言葉を大きな声で言ってみる練習をしたりします。