「“警察官の子供が殺人犯”と出てほしくないんや」警官の父が“隠蔽した”兵庫・岡山女児連続刺殺犯の素顔《余罪100件》
18年前の事件を自白した男は、女児を刺して性的興奮を覚えるサディストだった。兵庫県警で警部まで務め、叙勲もうけた父親は「警察官としての誇りをもって死なせてくれ」と……。 【画像】18年前の事件を自白した服役中の勝田州彦 ◆ ◆ ◆
「“警察官の子供が殺人犯”と出てほしくないんや」
2018年6月。兵庫県加古川市内の長閑な住宅街の一角に佇む、築50年ほどの木造住宅。小さな部屋を占領するベッドに腰かけた80代半ばの白髪の老人は、腰の痛みに耐えながら言葉を絞り出した。 「わしもな、もう静かに死にたいんや。静かに終わりたいんや。息子のことが、どうにも引っかかって。そういう人間が子供におったらな、いろいろあるんやて。“警察官の子供が殺人犯”と出てほしくないんや」 老人はかつて兵庫県警で警部まで務め、57歳で退職。08年には瑞宝単光章の叙勲をうけた元刑事だ。そんな老人の息子が、14年前に小学3年生の女児を刺殺したとする容疑で逮捕されたのが18年5月のこと。それ以来、老人は何度もある人物の訪問を受けていた。兵庫県警OBの飛(とび)松(まつ)五(いつ)男(お)氏。現役時は捜査一課で、退職後もジャーナリストとして活動していた。老人は元同僚に、同情を求めるようにあだ名でこう呼びかけた。 「トビさんも同じ気持ちやろ? 元警察官やから。自分が死んでからやったら、どないなっても構へんのやけど。わしがおる間はな」 飛松氏がこの老人への訪問を重ねていたのは、彼の息子が他の未解決事件にも関与していたと疑っていたからだ。老人は言った。 「トビさん、あんたがなんで来たのか分かっとる。あんたやから言うんや。でも死ぬまでは言わんとってくれ。あの子が他の事件をやっとったとしても、言うてほしくない……」 この2カ月後、老人はこの世を去る。そしてその6年後、息子は突然、「他の未解決事件」への関与を自白したのである――。 ◇ 止まっていたかに見えた事件の歯車が再び動き始めたのは、11月6日のこと。神戸新聞朝刊の一面に、〈加古川・女児刺殺 関与供述〉の見出しが躍ったのだ。 「04年に岡山県津山市で小学3年生の女児を殺害したとして、18年に逮捕され、23年に無期懲役判決が確定して服役中の勝田州(くに)彦(ひこ)(45)が、兵庫県内の2件の未解決事件への関与を認めていることが分かったのです。兵庫県警は7日、06年9月に同県たつの市で小学4年生の女児の胸などを刃物で刺して重傷を負わせた殺人未遂の容疑で勝田を逮捕した」(社会部記者)