最果タヒさんが語る「『詩』のイメージを変えたい理由」「何度も読み返したい漫画」
「漫画」をきっかけに、人生や価値観を違う角度から切り取る読書体験を
最果さんの新たな一面、漫画への思考を掘り下げるエッセイが『無人島には水と漫画とアイスクリーム』(リトルモア)です。セレクトショップを運営するアパレル企業・BEAMSが発行するカルチャー誌『IN THE CITY』及びウェブメディア『Be at TOKYO』で連載されていた漫画エッセイを一冊にまとめた本です。漫画史に残る傑作から近年のヒット作まで、最果さん自身が取り上げたい漫画を選び、思いを綴っています。 「漫画はジャンル問わず何でも読みます。このエッセイで取り上げた作品は、ずっと大好きだった作品もあれば、つい最近読んで、どうしても書きたいことがある!となって選んだものもあります。漫画って、登場人物に共感したり反感しながら読んだりすることが多くて、それが物語の楽しみ方として面白いんです。何度も読んで、何度もその人物のセリフや行動を反芻して、突然ああこういうことなのかな、ってその人物に心を重ねることができる瞬間が嬉しくて。『半神』(萩尾望都著/小学館)についてのエッセイはそんな感じで、作品のことを考えて、考え抜いて書きました。 一方で、自分の見てきた風景の中にある漫画として、自分の人生ごと振り返って書いたものもあります。『ちびまる子ちゃん』(さくらももこ著/集英社)についてのエッセイはまさにそんな感じでした。どのエッセイも、漫画の紹介というよりは、自分の人生とか価値観を漫画をきっかけに違う角度から切り取って、一人の読書体験として描いていくような書き方をしています」
漫画を思い出すと、読んだ時の光景と気持ちを思い出す
最果さんが漫画と出会ったきっかけは6歳くらいの頃。初めて読んだ漫画は、『動物のお医者さん』(佐々木倫子著/白泉社)と『ちびまる子ちゃん』でした。
「近所に住んでいたお姉さんからもらったのがきっかけでした。漫画がない家だったので、お姉さんからもらった漫画と図書館で読んだ『らんま1/2』(高橋留美子著/小学館)が最初でしたね。その後、『なかよし』(講談社)を買ってもらえるようになって、『怪盗セイント・テール』(立川恵著)とか『美少女戦士セーラームーン』(武内直子著)、『ミラクル☆ガールズ』(秋元奈美著)を読んでいた記憶があります。その後は漫画を読むことがあまり多くなかったのですが、大学生になりアルバイトで稼いだお金で漫画をまとめ買いをするようになって。間が空いていた分、みんなが読んでいた漫画を知らなかったりしつつも、大人が好きな『動物のお医者さん』とかは詳しかったりして。10代の頃は漫画の話をすると少しみんなとズレがありました」 漫画と自身との関係は、いわば人生の1シーンを共にするもの。漫画を思い出すと、その時の光景と気持ちを思い出すと言います。 「自分にとって漫画は、電車から見えた景色が綺麗で忘れられなかった、みたいなもの。そんな感覚の漫画がたくさんあるんです。気持ちが動いた瞬間の自分の思い出、それが作品を大事に思う理由や何度も読み返したい漫画になる。漫画は、自分にとっての愛用品、愛着のあるもの。人生の一部にあるものとして受け止めています」